『地球の歩き方』と『ムー』が異色のコラボ。予想以上の反響も、いったい誰が買っているのか…編集長を直撃
中学生から70代まで。なぜ読者層が幅広いのか
雑誌に限っても『ムー』の読者層は実に幅広いという。最近は、50代が中心だが、中学生から70代までいる。 「二世代で読んでいる家庭もありますね。“お母さんが読んでいて、私も読むようになった”とか。逆に“読むなって言われたから、こっそり読んでた”なんて話も聞きます」 実のところ『ムー』は誰が読んでも面白い雑誌である。だいぶ前の話になるが、『週刊SPA!』の取材で当時、東京拘置所にいた日本赤軍のリーダー・重信房子氏を訪ねたことがある。面会を終えて、差し入れ所を見ていたところ、同行した編集者が「これを差し入れましょう」とニコニコしながら手に取ったのが『ムー』だった。後日、編集宛てに初めて読んだが非常に面白い内容で楽しめたと礼状が来た。三上氏はいう。 「『ムー』は刑務所でも読める雑誌の一つなんです。収監されている人も『ムー』を楽しんでいるみたいですね。本当に様々な場所で読まれているんだなと実感しています」 ただ、そこに安穏とはしていない。将来に向けて新しい読者層の開拓にも余念がない。昨年には『こちら、ヒミツのムー調査団! その少年は UFO から来た!?』を刊行したり、子供向けのUFOやUMAを扱うムックにも盛んに挑んでいる。 「これは、編集部としては子供向けの内容を作るのは新しい挑戦なんです。『学校の怪談』のような、子供が好きそうな話題をイラストや漫画で紹介しています。こうした子供向けのものは、大人向けの『ムー』とは全然違うアプローチが必要なんです。でも、子供の頃から不思議なものに興味を持ってもらえれば、将来の『ムー』読者になってくれるかもしれない………そんな長期的な視点で取り組んでいます」
『ムー』読者のリテラシーは驚くほど高い
もうひとつ『ムー』の魅力の1つは、読者との距離の近さ、そして読者自身の熱量の高さにある。 「以前、平将門のミステリースポットを巡るバスツアーをやったんです。編集長と一緒に回るという企画でした。とにかく参加者全員が楽しそうで。『ムー』の読者って、普段は自分の興味を隠している人も多いんです。でも、このツアーでは同じ興味を持つ人たちと出会えるわけです。まるで『隠れキリシタン』同士が出会ったような雰囲気でしたよ」 このツアーを通じて、結婚にまで至ったカップルも誕生しているというから『ムー』は少子化対策にも貢献しているのかもしれない。 しかし、そんな「熱い読者」がいると書くと、この記事を読んでいる読者は驚くかもしれない。なにせ近年はQアノンなり暇アノンなりのネットを通じて一線を越えてしまった「ヤバ過ぎる陰謀論者」が溢れているからだ。 ところが、日本のオカルトを担ってきた『ムー』読者のリテラシーは驚くほどに高いという。 「本当にリテラシーは高いです。むしろ編集部より賢いくらいです。だって『ムー』の記事は先月号と今月号で矛盾していることも当たり前です。UFOの乗組員が地底人だと書いたかと思えば、未来人と書いていることもあります。いろんな説を読んで、自分なりの解釈をする。そんな楽しみ方をしているんじゃないでしょうか。読者からも、そうした説を比較して持論を記したお便りがよく届きますよ。いずれにしても『ムー』が45年も続いているのは、読者の方々のおかげです。時代とともに変化しながらも、不思議なものへの興味は普遍的なものだと実感しています。これからも、その好奇心に応えていきたいですね」