『地球の歩き方』と『ムー』が異色のコラボ。予想以上の反響も、いったい誰が買っているのか…編集長を直撃
正反対のものを組み合わせると新しい味が生まれる
このコラボの誕生秘話も面白い。 「新しい社長が就任した時、将来的に『ムー』とのコラボなんかあってもいいよね』みたいな話をしたんですよ。そうしたら『地球の歩き方』のほうも興味を示して、トントン拍子で話が進んだんです。現場としては『えっ、本当にやるの?』だったんですけど『社長同士でもう話ができてるんじゃないの?』みたいな雰囲気だったんです」 しかし、一筋縄ではいかなかった。正反対の性質を持つ2つのメディアをどうやって融合させるか、その配分こそが売れる・売れないを大きく分けるからだ。 「最初は『混ぜるな危険』みたいな雰囲気でした。でも、料理で考えてみたんです。甘いものと辛いもの、正反対のものを組み合わせると新しい味が生まれる。そんな感じでアプローチしました」
どこに刺さっているのかがわからない
『地球の歩き方』のページと『ムー』のページを明確に分ける構成に。その結果『地球の歩き方』ファンも違和感なく読めるし、『ムー』のファンも満足できる絶妙な本が生まれた。ちなみに、この苦労は第二弾である『ムーJAPAN』でも同様だったという。様々な情報を詰め込んだ世界編に対して、日本編は実際にいくことのできるガイドブックの要素があったためだ。そのため『地球の歩き方』編集部は、複数回にわたって台割を引き直したという。 この努力は報われ、実際に本はヒットしている。しかし、気になることがある。いったい誰が買っているかということだ。 「正直、どこに刺さっているのかがわからないんです。ガイドブックとしては重いし、かさばる。でも、売れている。おそらく、1冊をずっと読み通すような本ではなく、気になるところを拾い読みする。そんな使い方をされているんじゃないでしょうか」
『ムー』と『地球の歩き方』の読者には、共通点が
意外にも『ムー』と『地球の歩き方』の読者層には共通点があるという。 「世界中を旅したい人って、普通の観光地じゃなくて、マニアックな場所を求めるんですよ。そういう意味では、『ムー』の読者と重なる部分があるんです。両方とも、未知のものへの好奇心が強い人たちが読者なんじゃないでしょうか」 共に創刊は1979年。かたやどちらも未知の世界への探求をテーマにしていたという点では共通している。「異色のコラボ」という表現は容易いが、実は両者は同梱なのかもしれない。 それでもなお『ムー』の読者層は気になる。なにしろ、最近はアパレルとのコラボも盛んだ。どう考えても、読者っぽくない人がTシャツを着たり、グッズを持っていることがある。三上氏もまた、そんな体験をしたことがある。 「しまむらさんとコラボした『ムー』のポーチを持っている女子高生を見かけたことがあります。多分、雑誌は読んでないでしょうけど。でも、そういう層にも『ムー』の存在が知られているのは面白いですね」