「介護ヘルパーの乱」が暴いた国の介護つぶし
細切れ労働化も追い打ち
こうした生活できない待遇に、効率化と称する介護の細切れ化が追い打ちをかける。 2000年の発足時、介護保険の基本報酬の区分は、「30分未満」「30分以上1時間未満」「1時間以上」の3種類だった。だが、「生産性」「効率化」路線の中、12年の改定で、「20分未満」「20分以上30分未満」、「45分以上」「60分以上」「70分以上」など介護の種類によって細分化され、大幅に短縮される。 これらは「不要なサービス提供」による利用者の経済的負担を減らし、ヘルパーの減少の中でサービスを維持できるなど、「人手不足の解決策」として喧伝された。 だが、現場の証言は全く違う。対話することは認知症の改善に極めて重要だが、改定でそれが難しくなった。原告の一人の高裁での最終陳述によると、改定前は、「冷蔵庫に何があるか聞いて、一緒に調理する余裕があり」「本人同意、本人選択という教科書通りの介護の基本を実践」できた。改定後はそれも難しくなった。 低待遇を補っていた「人と関われる」という魅力さえ薄れ、若者の参入が減り、人手不足の度合いを示す有効求人倍率は15倍にまで膨らんだ。現場はいま、50代以上が7割を占める。短時間化は「ヘルパーの人手不足の解決策」ではなく、人手不足の原因になった。介護報酬抑制を最優先する政府の意志が、そこにある。 これらに対する裁判での国側の答弁は、介護報酬には、移動時間などへの対価が一括して含まれているというものだった。だが、原告側が、「含まれている」とする根拠をただしても、確たる回答はなく、数字の根拠は経営側からの聞き取りによる「介護事業経営実態調査」だけ、ということもわかってきた。 そんな調査が「移動時間への不払い」という経営に不利な事実を明るみに出せるのか。国際的に見て人口当たりの数が少ないとされる労働基準監督官が、膨大な事業所への指導ができるのか。原告側からは、こうした疑問も相次いだ。