「石丸現象」はネット広告が着火剤に!都知事選で見えた新しい選挙手法
さらに、各候補者のどんな動画が見られているのかを調べました。 この表は得票順の上位3人の名前がタイトルに入っている動画で再生順が多いもののリストです。 これらの動画の内容をみると小池氏と蓮舫氏の動画がそれぞれへの批判的な内容を含んだものがほとんどなのに比べて、石丸市の上位10チャンネルは選挙期間中の街頭演説や安芸高田市長時代の会見や議会答弁、などの切り抜き動画が多いのが特徴です。 報道の量や時間の枠が決まっている新聞やテレビに比べると、ネット番組はボリュームの上限がありません。こうした街頭演説やネット番組の出演した際の受け答えは、切り取り動画として急速に量産され、拡散されていきました。 YouTubeの特徴はエコチェーンバーです。石丸氏に好意的な動画を見た人は、次から次へと同様の動画が「おススメ」されて繰り返し見ることを促される環境に置かれます。さらに、情報の取得方法としてYouTubeを利用している層は投票意向が高い傾向があります。YouTube上で量産された❝石丸応援動画❞は、無党派層だけでなく、既存政党の支持層からも注目を集めやすい状況になりました。 マーケティングの理論に沿うと、こう仮定ができます。石丸氏を広告で「認知」し、「興味・関心」が湧いて検索をし、投票先として「比較・検討」した結果、「購入(投票)」した。 政治経験が豊富で、保守とリベラルの地盤を固めた小池氏と蓮舫氏に対して、新人で知名度の劣る石丸氏が無党派層が多い「ネット地盤」を固めていたと考えられます。
「石丸現象」をムーブメントにつなげるために意識するポイント
こうした石丸現象はネット上での知名度さえあれば再現可能なのでしょうか?そうとも言い切れません。石丸現象の総仕上げは、ネット上のバズリと地上戦をつなげることにあります。 石丸氏は選挙期間中1日10カ所以上の街頭演説に立ち、各現場で「写真や動画をとって拡散してください」「今日の思い出の1枚として家族や友達に見せてください」と呼び掛けました。夜はネットの討論番組や対談番組にも出演しました。 ポイントになるのは、「アテンションからファン獲得へ」という観点です。 まず、ネット広告でエコーチェンバーに引き入れてから、自身への投票へと導く仕組み、そして「ファンとして定着させるためのコンテンツやコミュニケーション」を充実させること、この流れを作ることこそ肝要です。