ドラギ前ECB総裁が欧州委員長候補に浮上、仏大統領が人事案を打診
(ブルームバーグ): マクロン仏大統領が次期欧州委員長にドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁を充てる人事案を域内首脳に打診している。実際にそうなれば、5年前に自ら就任を後押ししたフォンデアライエン欧州委員長を交代させることになる。
欧州議会選挙まで2カ月足らずとなる中、マクロン大統領はメローニ伊首相らと、ドラギ氏のような実務者を欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委のトップに据える可能性について協議しているという。協議に詳しい複数の関係者が明らかにした。
フォンデアライエン氏は2019年、マクロン氏と当時のメルケル独首相の合意を受けてサプライズで欧州委員長に就任。この組織を「地政学的委員会」に変革すると宣言した。しかし、フォンデアライエン氏はその役割を過度に政治化することで、自らチャンスをつぶしてしまった可能性があると、別の関係者は語った。
フォンデアライエン氏に対しては、特に貿易交渉、気候変動対策、対米関係などに関する欧州委の運営方法を巡り、一部で強い不満がくすぶっている。マクロン氏も公然と同氏を批判している。
仏大統領府の報道官はコメントを控えた。
だが、マクロン氏が本気でトップ交代を検討しているのか、フォンデアライエン氏から今後譲歩を引き出すための交渉カードとして圧力をかけているのかはっきりしない、とEU関係者らは匿名を条件に明らかにした。
いずれにしても6月9日に実施される欧州議会選の後まで、人事に関する決定は下されないとみられている。
ドラギ氏はECB総裁時代に、単一通貨ユーロ防衛へ「何でもする」と言明。ユーロを救ったとして域内で今も高く評価されている。一方で、ドラギ氏を巡っては76歳という高齢に加え、財政規律を重視する国々が警戒する欧州共同債の擁護派であることなどから、欧州委員長に就任する可能性は低いとの見方もある。
原題:Macron Gauging Support for Plan to Install Draghi in Top EU Job(抜粋)