「もったいない精神」から生まれたヒノキのおもちゃが人気 通常廃棄処分になる枝や根を活用、香りに心を落ち着かせる効果も
【令和を変える!関西の発想力】 古くから関西に根付く「もったいない精神」。単なるケチではなく、どんなものも無駄にしないエコな考え方ですが、昨今、世界ではSDGsが提唱する概念として知られるようになりました。 そんな中、本場を自負する大阪では、SDGsの時流と、持ち前の節約魂を生かして「もったいないビジネス」を展開する企業が増えています。 なかでも、木材の輸出入で70年の歴史を誇る「丸紅木材」は、世界で唯一、日本だけに植栽されている木材用ヒノキの廃材で子供用のおもちゃを作り、売り上げを約4倍に伸ばしました。 ちなみに同社は社員26人の中小企業。あの大手総合商社の系列ではありません。昔の社名が「紅友商会」で、仕入れた丸太に「紅」の丸印を押していたため、ごく自然に社名が「丸紅木材」になったそうです。 社長の清水文孝さんは「よく間違えられます」と笑いながら、「もったいない精神」と中小企業ならではの行動力をフルに生かして、ヒノキの廃材でヒット商品を生んだプロセスを話してくれました。 まず、見せてくれたのは木材用ヒノキのイラスト。そして「売れるのはまっすぐ伸びた部分だけで、枝や根の部分は通常廃棄処分です。もったいないでしょ」と言います。確かに枝や根の部分も世界唯一の木材で、ヒノキの質も香りも変わらないと思うと、捨てる方が理不尽な気がします。 清水社長は木材のプロだけに、ことさら「もったいない」と思ったらしく、廃材を生かす方法を模索し始めました。そんな中でひらめいたのが、子供のおもちゃだったそう。ヒノキの香りは、心を落ち着かせるので子供の成長に良い影響を及ぼすだけでなく、サイズも小さいので、カタチがバラバラな廃材でも作ることができます。 ただ、子供に好まれる企画やデザインには女性の感性が欠かせません。そこで女子社員たちに企画やデザインを託し、ブランド名をヒノキ(HINOKI)の逆さ読みで「IKONIH(アイコニー)」に定めました。こうしてヒノキの廃材から、芳醇な香りに満ちた積み木や鉄道の模型、ヒノキボールの砂場など、子供が喜ぶおもちゃが次々と生まれました。今では、保育園や百貨店のキッズコーナーにも導入されています。 「次は、世界の子供たちに喜んでもらいます」と清水社長。世界唯一の木材だけに、日本が誇るSDGsプロジェクトになりそうですね。楽しみです。 (地域ブランド戦略家・殿村美樹) =隔週木曜日掲載