「WASP-76b」では珍しい大気現象「光輪」が発生している? 確認されれば太陽系外惑星では初
■WASP-76bでは「光輪」が発生している可能性を発見!
Demangeon氏らの研究チームは、WASP-76bのターミネーターゾーンの明るさの違いについて、ESA(欧州宇宙機関)とSSO(スイス宇宙局)が打ち上げた宇宙望遠鏡「CHEOPS(ケオプス)」での観測データを使用した研究を行いました。CHEOPSは2020年からの3年間でWASP-76bの観測を合計23回行っています。また、研究チームはCHEOPSの観測データと他の宇宙望遠鏡(「TESS」「ハッブル」「スピッツァー」)の観測データを比較することで、WASP-76bから来る反射光の光学的性質について正確な分析を行いました。 その結果、東半球のターミネーターゾーンから来る反射光には、特定の狭い方向かつ非常に狭い範囲から来たものが含まれていることが分かりました。つまり、東側のターミネーターゾーンでは、局所的に光が増すような大気現象が起きていることになります。 このような光学的現象は地球でも起きており、「光輪(グローリー)」と呼ばれています。光輪は虹色の円が何重にも重なっていて、一見すると虹に似ています。しかし、生じるメカニズムはそれぞれ異なっており、光輪と虹は別の現象です(※2)。また、地球で光輪が観測される時は、光輪がしばしば観察者自身の影を囲っている状態で発生します。光輪と影がセットになったものは「ブロッケン現象」と呼ばれます。 光輪はこれまで地球と金星(※3)で観測されていますが、今回の研究が正しければ、WASP-76bは光輪の発生が確認された初の太陽系外惑星となります。光輪として観測される光は非常に狭い角度に集中するため、WASP-76bとCHEOPSが完璧な配置で並び、かつ光輪が発生する大気条件が揃わなければ観測できないため、これまで他の太陽系外惑星で観測されたことがなくても無理のないことです。 ※2…一般的な虹は水滴の内部で屈折・反射した光が色(波長)ごとに分解されることで生じます。これに対し、光輪は虹が生じる時よりもずっと小さな水滴で発生し、より複雑な現象(水滴の近くを通過する光で生じるトンネル効果と干渉)によって発生すると考えられています。 ※3…金星の大気には水がほとんど含まれていないため、金星の光輪は地球とは別のメカニズムで生じているはずです。金星大気には硫酸が豊富に含まれていますが、純粋な硫酸では観測された現象を説明できないと考えられています。硫酸の滴の中心部に塩化鉄が含まれているか、あるいは滴の外側を単体の硫黄の殻が覆っていることで生じるとする説があるものの、詳細は判明していません。