昌平またしても4強を逃す
第102回全国高校サッカー選手権大会は1月4日、浦和駒場スタジアムなどで準々決勝が行われ、昌平(埼玉)は青森山田(青森)に0-4で敗れ、初の4強入りを逃した。埼玉県勢としても1992年度の第71回大会で、武南が3位になって以来のベスト4進出はならなかった。 【フォトギャラリー】青森山田vs昌平 まさかの4失点、よもやの無得点だった。 試合開始からあっと言う間に2点を失ったのが痛かった。前半2分、右CKのこぼれ球から展開されて先制点を奪われると、2分後には左FKからゴールを割られてしまう。主将のCB佐怒賀大門(3年)は、「試合への入り方がやや課題だったが、立ち上がりの2失点でメンタル的に少しきつくなり、引いて受け身になってしまった」と早々の連続失点を悔やんだ。 昌平の攻撃力を思うと、この2点で抑えておけば致命的なハンディにはならなかったが、前半19分に右サイドを突破されてから失った3点目が重くのしかかった。後半4分にもFKから4点目を奪われたように、ここでも佐怒賀が反省したゲームへの入り方に問題があったのかもしれない。 村松明人監督は「先行するイメージでいたので、(連続失点で)相手に守備でも攻撃でも余裕を与えてしまった。先行して自分たちの流れでやりたかったのだが……」とショックの色をにじませた。 昌平は今回で6度目の出場だが、4失点は過去最多となる。これまでは第98回大会準々決勝、青森山田戦での3失点だ。この時は前半に3点取られたが、後半に2点を返した。 今回も前半を0-3で折り返したが、昌平には戦況を一変させられる切り札が複数いるだけに、後半の巻き返しは十分に期待できた。 3失点した後、MF西嶋大翔(3年)から順に3戦連続得点中のMF長璃喜(1年)、MF山口豪太(1年)、FW工藤聖太郎(3年)といった攻撃陣を送り込んだ。村松監督は「仕掛けられる選手をどんどん入れ、流れを変えようと思った。(青森山田が固めた中央へ)入っていける選手を入れたつもりだが、相手は中だけやられなければいいという戦い方だった。1対1の強さを感じた」と敵の守備網を崩す難しさについて触れた。 前半に比べるとボールを握る回数は圧倒的に増え、シュートも多くなった。しかし、切れ味抜群のドリブルとパスを武器にゴールを襲う昌平らしい鋭いアタックは、青森山田の対人の強さと寄せの速さに封じられてしまった。 3回戦の1トップから1、2回戦で採用した小田晄平(3年)と鄭志鍚(2年)の2トップに戻して臨んだ。前後半で計7本のシュートを放ったものの、決定的な一打は前半18分に鄭の出色のスルーパスから小田が惜しくも左に外した1度くらいだった。 セットプレーで鋭いボールを放り込んでいたMF土谷飛雅(3年)は、「相手にボールを持たされている感じで、守備を崩せなかった。ロングボールを警戒し過ぎてラインを引いて守ってしまい、こぼれ球を拾えなかった」と言い、指揮官が指摘した“中だけは引き締めた”青森山田の戦略にはまったようだ。 第98、99回大会に続いて準々決勝に進んだが、またしても8強の壁を突破できなかった。インターハイは4度の出場で3度もベスト4に駆け上がっているが、やはり選手権は勝手が違うのだろう。 村松監督は「相手には攻守で1対1の強さを感じた。うちもここをもっとやっていかないと」と青森山田にあって、昌平に足りないところを体感したと言う。 主将でCBの石川穂高(3年)が、昨年7月31日の練習中に左ひざ前十字じん帯を断裂し、今大会の予選にも本戦にも出られなくなった。代わって守備ラインをまとめた佐怒賀は、「終わった時は情けなかったし、悔しかった」と0-4を残念がったが、「うちには力のある後輩がたくさんいる。いろんな舞台で活躍し、優勝してほしい」と果たせなかった悲願を1、2年生に託した。 (文=河野正 写真=矢島公彦)