遠藤憲一、人生の転機は“劇場を回ってビラ配り”「チラシを渡した相手が……1日限りの公演に来てくれて」偶然が引き起こした奇跡の出会い
渋い表情で決めると迫力満点の強面なのに、ニコッと笑うと誰もが「エンケンさん!」と声をかけたくなる俳優、遠藤憲一。多面的な魅力を縦横無尽に使い分ける彼が現在取り組んでいるのは、心と身体が“全国民”と入れ替わってしまう、総理大臣・武藤泰山役だ。9年前の2015年に放送されて大人気となった『民王』(テレビ朝日系)の続編『民王R Inspired by 池井戸潤』に挑んでいる、遠藤憲一のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】 ■【画像】遠藤憲一63歳、もうひとつの人生の転機を明かす──。THE CHANGEオリジナル動画 遠藤憲一が映像の世界に入ったのは、1枚のチラシがきっかけだったという。 「高校を辞めてしまってバイトばかりしていたころに、ふと興味をひかれて劇団に入り、それも辞めてしまったんですけど、21歳のときに自分で企画して、登場人物が2人だけの芝居をやることにしたんです。 劇場を回って宣伝用のチラシを配っていたところ、渡した相手のひとりが、以前所属していた事務所の社長でした。たった1日限りの公演を見に来てくれて、スカウトしていただいたのが、映像の世界に飛び込むきっかけです」 若いころから強面だったため、仕事のほとんどは刑事物の犯人役やVシネマの極道役など。しかし、演じることはおもしろく、数多くの作品に出演し続けた。 「40代に入ったころ、ずっと一緒にやってきた事務所のマネージャーが高齢になって引退したいということになったんですね。さてどうしよう……となったとき、女房に頼んだんです。“オレのマネージャーをやってくれないか”って」
60歳を過ぎていま思うこと「自分の中で新しいエネルギーが再燃している」
愛妻家で知られる遠藤だが、プライベートだけではなく、仕事の面でも妻にサポートしてもらいと思った理由は? 「大きな組織とか集団とかが、あんまり得意じゃないんですよね。自分のことを理解してくれる相手と、こぢんまりでやるのが性に合ってる。そう考えると、オレのダメなところも、いいところもわかってくれているのは、女房しかいないと思ったんです。でも、最初は“絶対にイヤだ”と断られて、口説き落とすのに3年くらいかかりました(笑)」 ようやく引き受けてもらい、自身の事務所「エンズタワー」を立ち上げたのが、2007年のこと。 「彼女がマネージャーをやってくれるようになって、一気に仕事の幅が広がりました。それまではあまりテレビの仕事はしてなかったんですけど、彼女が売り込んでくれたおかげで、少しずつ出演するようになりました。ホント、女房には頭が上がらないです。叱られることも多いですけどね(笑)」 そして現在、遠藤憲一は引く手あまたの売れっ子俳優となり、多忙な日々を送っている。 「できるだけお仕事はお断りしないようにしているんだけど、60歳を過ぎてからは、なんでもかんでもはできなくなってきましたね、体力的に。 でも、“年齢的にこんなもんかな”と諦めたらそこで終わりだと思うんですよ。そういう意味では、『民王R』というチャレンジングなお仕事をいただいて、自分の中で新しいエネルギーが再燃している感じがしますね。ギアがグッと一段上がったというか。ありがたいことだと思っています」 遠藤憲一(えんどう・けんいち) 1961年6月28日生まれ、東京都出身。1983年にドラマ『壬生の恋歌』(NHK)でデビューし、2009年に『湯けむりスナイパー』(テレビ東京系)で連ドラ初主演。俳優、声優、ナレーター、脚本家として活躍している。主な出演作は、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)、『私のおじさん~WATAOJI~』(テレビ朝日系)、『バイプレイヤーズ』シリーズ(テレビ東京系)、『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)、映画『赤羽骨子のボディガード』(2024)『スオミの話をしよう』(2024)など多数。 工藤菊香
工藤菊香