今季はアルピーヌでWECに参戦しつつ、メルセデスF1のリザーブを務めるミック（メルセデス提供）

　【リスボン＝ルイス・バスコンセロス】2022年限りでF1のレギュラーシートを失ったミック・シューマッハー（25）＝ドイツ＝に、26年からF1に新規参入するアウディ入りの可能性が出てきた。8月に就任した同チームのマッティア・ビノット最高執行責任者（COO、54）が、イタリア紙の取材に「候補の1人」と明かした。ミックは7度のF1王者に輝いたレジェンド、ミハエルさん（55）の長男。闘病中の父のためにも、復帰のチャンスを生かしたい。 　昨年からメルセデスのリザーブとして裏方に回ったミックに、レギュラー復帰のチャンスが訪れた。全チームの中でたった一つ残っているシート、アウディに買収されたザウバーが運営するチームの来季ドライバー候補に挙がったのだ。

ミックとは旧知の仲であるビノットCOO（アウディ提供）

　ビノットCOOは「ミックを高く評価し、話し合いもしている。間違いなく候補の1人」と伊紙の取材に応えた。来季の候補を、ステーク名義で戦った今季レギュラーのバルテリ・ボッタス、F2のランク首位に立つガブリエル・ボルトレートを含めた3人に絞り込んだようだ。 　以前はフェラーリ代表を務めており、跳ね馬の育成ドライバーだったミックとは旧知の仲。「昔から知っているので、彼の強みはよく分かっている」と関係の深さをにおわせた。 　ミックは2021～22年にハースで戦ったが、車両の戦闘力不足にも泣き、入賞わずか2回と大苦戦。偉大な父親の七光も尽き、23年から裏方生活を余儀なくされた。F1復帰を目指し、今季はアルピーヌから世界耐久選手権（WEC）に参戦したものの、同チームの来季F1シートは育成上がりのジャック・ドゥーハンに奪われた。 　F1を諦め、他シリーズへの本格参戦も現実味を増す中、アウディが権力争いを繰り広げたチーム首脳を一掃し、ビノットCOOを招聘（しょうへい）。跳ね馬時代のボスが表舞台に復帰したことで、一気に情勢が変化した。 　ビノットCOOは「チームを軌道に乗せる経験豊富なドライバーと、チームとともに成長する若く才能のあるドライバーの二軸で考えている」と説明。ベテラン枠は来季から2年契約を結んだニコ・ヒュルケンベルグが埋め、残る若手枠は現時点でミックとボルトレートが有力視される。 　ただ、ブラジル人のボルトレートはマクラーレンの育成ドライバーで、“移籍”となるとハードルは高い。ミックは既にフェラーリとの関係も切れており、ドイツ国籍もアウディにはプラス材料か。雌伏の時を過ごす2世ドライバーに、思わぬ追い風が吹き出した。