30歳を過ぎた夜職女性の“昼職”転職事情…シングルマザーのキャバ嬢や歴10年のデリヘル嬢にマッチングする「ヒルコレスナック」とは?
「いまさらなにをしていいのかわからない」
それでも30歳を迎える頃には、同年代のキャストも夜職をあがっていき、漠然とした不安を覚えた横井さんは、2022年末からヒルコレスナックでの勤務を始める。これまで約40社ほどの人事とマッチングを果たしたが、就職には至っていない。 「勤務中に企業の方と話すのは楽しいのですが、いざとなると自分が堅い仕事をやっているのが想像できないんです。昼職経験はほぼないし、役立ちそうな資格もない。職場の人間関係もうまくできるか不安なので、本当に自分は求められている人材なのかと尻込みしてしまう。 デリヘルの場合は、性的サービスを提供しているので、よくも悪くもダイレクトに自分の需要があると感じられます。もちろんストレスもある仕事ですが、昼職に就いて自分が役に立たなかったらどうしようと不安になるストレスのほうが大きいです。 それに私は結婚願望もなければ、子供がほしいとも思いません。趣味はお酒ぐらいで、希望する職種もない。とにかくふわっとしたまま30歳を超えてしまったので、いまさらなにをしたいのかわからないんです。 ただ同時に、自分の需要がだんだん減っていくのは痛感しています。熟女系の店舗に在籍するのもいいんでしょうけど、それでもいずれ限界は訪れる。いまのところ40歳までに風俗を卒業しようとは思っていますが……」 いくらマッチングの機会に恵まれていたところで、結局は本人のやる気しだいによる部分も大きいのかもしれない。
面接できわどい質問もしやすい
一方で、企業側は、どのような理由でナイトワーカーの女性を採用するのか。 日本とカンボジアを拠点に活動する広告代理店『レプリネット・カンボジア』は、これまでヒルコレスナックで10人近くの従業員を採用してきた。いずれもカンボジアの不動産を売り込む営業部隊として、ナイトワーカーをリクルートしている。 「当社では、企業の社長が集まるような交流会や定例会に参加して、そこでカンボジアの不動産に興味はないかと営業をかけるんです。そのとき、どうしても中年のおじさんが声をかけるより、30歳前後の女性が声をかけたほうが食いつきがいいわけですよ。 いまどき普通の面接だと、結婚しているかどうかを聞くだけでハラスメント認定されてしまう時代です。ただ、ヒルコレスナックだとプライベートなことも聞きやすい。将来的に結婚や子供を考えているかどうかを聞くことによって、カンボジアに長期出張できるかどうかなど、お互いにどういう仕事量や形態で進めていけばいいのかが固めやすいです」 そう語るのは、レプリネット・カンボジア代表の北野岳氏だ。 現在カンボジアは、年5.5%ほどのGDP成長率を誇るにもかかわらず、日本の大手デベロッパーの参入が少ないため、レプリネットはとにかく不動産を捌きたい。そこで、いかに効率よく不動産を購入してもらえるか考えた結果、ヒルコレスナックでナイトワーカーをリクルートをしようと考えた。 しかし、夜職の女性を雇い続けることで、企業としての信頼やイメージに影響はないのか。 「当社の女性社員が、交流会を通して他社からスカウトされる話もよく聞きます。他の企業からしても、前職が水商売だからマイナスになるのではなく、その女性の人当たりややる気を重視している企業も一定数いるかと思います」 ナイトワークを始めた事情は人それぞれだが、30歳を超えてからでも昼職への門戸はそれなりに開かれているようだ。 取材・文・写真/佐藤隼秀
佐藤隼秀