考察『錦糸町パラダイス』その場に居合わせた感覚になった最終話
新たなドラマの可能性が垣間見えた『錦糸町』
3カ月の間、毎週、少し距離のある画角から錦糸町の人々を見つめてきた。その映像からは、廣木隆一が監督として深夜ドラマを撮る特別感を存分に味わった。人と人が関わるうえで感じる気まずさやいたたまれなさ、その微妙な空気を感じる時間さえも舞台上に再現してみせる「劇団普通」の石黒麻衣によるプロット。そこにプロデューサーでもある太田勇と今井隆文も加わって、リアリティあるセリフが生まれた。賀来賢人、柄本時生、落合モトキ、元から仲のいい3人だからこそのシーンもたくさんあった。 「友達との思い出の地」 「感情が渦巻いてる(場所)」 「なんでもある(場所)。ありがとうございました」 最後の3人のインタビューは、大助、一平、裕ちゃんの言葉でもあり、同時に賀来、落合、柄本の言葉でもあったのではないか。他のドラマでは作り得ない特別な時間が、ここには流れていたと思う。俳優によるプロデュース作品が増えている中で、『錦糸町パラダイス』はキャストも「劇団年一」(賀来、落合、柄本、岡田)という仲のいい俳優が務め、それが作品にいい作用を与えた。この作品を通じて、私たちは新たなドラマの可能性を観たのかもしれない。 ●番組情報 ドラマ24『錦糸町パラダイス~渋谷から一本』(テレ東) 企画・原案_柄本時生、今井隆文、太田勇 脚本_今井隆文、太田勇、石黒麻衣 監督_廣木隆一、太田勇、木ノ本浩平 出演_賀来賢人、柄本時生、落合モトキ、岡田将生 他 主題歌_MOROHA 『燦美歌』 Lemino、U-NEXTにて全話配信中(有料) ●釣木文恵(つるき・ふみえ) ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。 ●オカヤイヅミ 漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。この2作品で第26回手塚治虫文化賞を受賞。趣味は自炊。 Edit_Yukiko Arai
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