【試乗】加速はかなり向上……だけどハンドリングには気になる点も! アウトランダーPHEVの進化はどれほど? 大幅改良した「アウトランダーPHEV」をサーキットで徹底チェックした!!
100km超えのEV航続距離を実現!
三菱のPHEVシステムはその先進性と環境性能の高さ、実用性に優れていることなどから世界中で高く評価され、BEVやHVと並んで新世代車の理想的パワーソースとして認知されている。現在エクリプス・クロスとアウトランダーの2車種に搭載され、PHEVカテゴリーにおいて圧倒的な人気を誇っているのだ。そのアウトランダーPHEVが改良を受け、大幅にパフォーマンス向上を果たした。その最新モデルに袖ヶ浦フォレストレースウェイのクローズドコースで試乗してきたのでリポートしよう。 【画像】マイナーチェンジした三菱アウトランダーPHEVのインテリアなどの画像を見る(87枚) 今回の改良点は 1)バッテリーの容量アップによるEV航続距離の向上や動力性能の改善 2)ハンドリングの改善 3)装備の見直しや質感の向上 が挙げられている。 1)について見てみると、従来20kWhだったリチウムイオンのメインインバッテリーが22.7kWhへと約10%高められた。これにより、EVモードでの走行距離はMグレードで87kmから106km(WLTCモード)へと伸長し、ついに100km超えのEV航続距離を実現している。 これはクローズドコースでは試せないが、同時に改良され20%の最高出力向上を果たしたパワートレインの動力性能やドライバビリティを試すことはできた。発進時のアクセル操作に対するゲインを落として急発進を抑制し、低速トルクの大きなEVに見られがちな走りだしの強烈な加速感を抑えジェントルさを与えている。だが、加速を続けて行けば0-100km/h加速では2秒タイムアップしているほど動力性能は高まっているのである。
ハンドリングは仕様によって異なる
2)のハンドリング改善については、従来モデルのステアリング操作初期ゲインが強く、直線走行時に落ち着かないというユーザーからの声を反映させ、ステアリング操舵ゲインを落として直進安定性を高めている。 実際に走らせてみると、確かにステアリングセンター付近の安定感は高まっていて、重厚感が増すことで質感も向上していると感じた。ただ、この様子は7人乗り3列シート仕様と5人乗り2列シート仕様では若干様子が異なった。3列シート仕様では後輪荷重が40kg以上増え、後輪の接地荷重も大きい。これがコーナリング中もつねにリヤタイヤの接地性を確保しているので安定したライントレースが可能だった。 一方で2列シート仕様では後輪荷重が少なく、とくにコーナーへのアプローチ区間、ブレーキングで前荷重にしてからのターンインで後輪が接地性を失い、急激なヨーの立ち上がりを引き起こした。カウンターステアを当てる必要があるほどのヨーレートは、直進安定性の向上と相反してコーナリング初期の安定感を削いでしまっている。 2列3列仕様どちらも旋回中の車体ロールは大きくなっていて、個人的には従来のハンドリングのほうが好みに合う。今回バッテリーの容量アップに伴い、車高が5mm上がった。欧州への輸出を鑑み180km/h以上の高速域でエンジンフードがバタつくのを抑えるため、軽量なアルミ製だったエンジンフードを鉄製のパネルに変え、3kg重量アップしたことで重心位置が相対的に高まっていることが影響したといえる。 3)の装備については、従来モデルも十分以上なクオリティの内装を誇っていたが、さらに上品質なインテリアとすることで欧州プレミアムブランドからの乗り換えユーザーにも納得してもらえる質感を与えている。また、ヤマハと共同で開発したオーディオシステムと、その音質向上のためにドアパネルに補強を加えたことも質感向上に寄与しているといえる。 このように進化したアウトランダーPHEVはおもに3つのポイントにおいて改良を施しているが、キーとなるのはバッテリーの容量アップとパワートレインの出力向上だろう。前後2モーターを独自に制御し駆動するが前後輪に直結感が感じられるのは三菱のシステムだけだ。さらにS-AWC制御により旋回特性も自由自在だ。 今回の改良では若干オンロードでの特性が改められてしまったが、フラットダートや雪道など低ミュー路においては相変わらずの高い運動性能を発揮できるはず。冬季には雪道の走行試乗を実施してリポートしたい。
中谷明彦