工芸ライターの田中敦子さんに教わる、普段使いのうつわ選びのコツ。
最近、作家もののうつわにもどんどん増えてきたという耐熱皿も、いつもの食卓に欠かせないレギュラーメンバー。 「耐熱性のうつわが増えた背景には食生活の変化があると思います。冷凍食品やミールキットが普及して電子レンジ調理はデフォルト、簡単で見栄えのするオーブン料理も受け入れられています。私自身もコンロについているグリルに耐熱皿をぱっと入れて、グラタンのようなものをよく作ります」 もちろん、実用一辺倒ではなく見た目も選択の大事な条件。好きなうつわにたまたま耐熱機能が備わっている。だから加熱調理以外の料理を盛ってもよし。
最後に忘れてはならないのが、どこかほっとする素朴な木のうつわ。 「うつわといえば焼き物、と思われがちですが、庶民に焼き物が広まったのは江戸時代後期以降といわれています。それまでは木のうつわが多く使われていました。とくに、“刳り物(くりもの)”と呼ばれるノミやカンナを使って木を刳りぬいたものは古くからあるうつわ。ひとつあると食卓に温もりが生まれます」 トルティーヤチップスをガサッと盛ったとしても油染みなど気にしない。普段の手入れは洗って拭いて乾かすだけ。ちょっとカサついてきたらサラダオイルやオリーブオイルを塗れば元の艶を取り戻せる。量産タイプのウレタン塗装にはない風合いが使うほどに増していく。 「せっかく作家さんのうつわを買ってもお客様用に、といってしまい込んでしまう人が意外と多いそうなんです。でもやっぱりうつわは使ってこそ価値がある。こんなふうに使えるんだということを知ってもらいたいですね」 当の作家さんの話を聞くと、昔の北欧などでは木のうつわの上に直接チーズや肉を置いてナイフで切っていたため、うつわの表面は傷だらけ。そんなふうに使ってもらうことが本望なのだとか。 「生活の中のうつわってそういうものですよね。でも、そこまでする勇気はまだ私にはないんですけど(笑)」