<俳優生活40年>妹尾和夫「大学でいっぺん演劇部経験したろ」
演劇部に入部も運搬専門係に
そんな妹尾が最初に取り組むよう言われたのは「道具運び係」だった。もっぱら運搬専門、小道具係のチーフを務める身長が185センチで柔道3段という2級上の男の先輩と行動をともにし、トラックに荷物を積んで公演を行う劇場へ、小道具などを運んだりしていた。 その小道具運びは重労働。そして、劇場では場面によって「セットを何秒で転換できるか」という方が大切だったので、先輩らの芝居や稽古を見る機会はほとんどなかった。
そんな中、楽しい思い出もいくつかあった。トラックの荷台に同級生の女性と乗り、そこへ雨が降ってくると「うわなんか映画みたい。俺、今なんかかっこいい」と感じたり、ある時は日本テレビへトラックを借りに行った帰りに、飯田橋の駅前で学生が演説をしているとケンカ騒ぎが発生。その大きな体の先輩が仲裁しにいったため、やむを得ず一緒に行くと、止めるどころかあちらこちらから殴られてしまった。 顔は血だらけになり、あわててトラックの荷台へ飛び乗り痛みを感じながらも「これってすごい青春やなぁ。俺、青春してるわ~。めっちゃええ感じやん」と演劇など関係なく、学生生活を謳歌していた。しかし、後に妹尾は、先輩と観に行ったある芝居を見て、人生観が変わり、後の俳優・妹尾和夫を形成していくことになる。 ちなみに、ここに出てくる柔道3段の先輩は、後に劇団四季に入り、ライオンキングなど数々の舞台に出演し現在も活躍している川原洋一郎さん。現在も交流があるという。 ■妹尾和夫(せのお・かずお)1951年11月17日大阪市大正区生まれ。20代半ばから大阪を拠点にドラマ「部長刑事」「必殺シリーズ」「暴れん坊将軍」などに悪役で多数出演。関西のテレビ。ラジオの情報番組にも多数出演しており、現在は「せのぶら本舗」「とことん全力投球!!妹尾和夫です」(いずれもABC朝日放送)で活躍中。12月16、17両日に自らが主催する劇団パロディフライの本公演「コペルニクスさん家はおとなりです。」(梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)に向け、全力で稽古、指導に取り組む。