マクラーレン・ホンダのテスト不調の理由とは?
ひとつは経験の差である。88年のマクラーレン・ホンダもパートナーを組んで1年目だったが、両者はともに当時、すでにF1で成功を収めていた。マクラーレンは84年からドライバーズ選手権で3連覇し、ホンダは86年から2年連続でウイリアムズとともにコンストラクターズタイトルを獲得していた。ゆえに両者が手を組んで誕生したマクラーレン・ホンダはドリームチームと呼ばれたものである。 それと比較すると今回のマクラーレン・ホンダは、当時とは状況が大きく異なる。まずホンダにとっては7年ぶりのF1であり、ホンダの最後の勝利は2006年だった。一方、マクラーレンも最後のタイトルは2008年で、過去2年間は1勝もできておらず、長いトンネルの中にいるのである。 それに加え、2014年からF1はパワートレインが大きく変更された。これまでエンジンと呼ばれてきた内燃機関単体から、内燃機関に2種類の回生エネルギーシステムを組み合わせた複雑なパワーユニットに変身したのである。この変更がいかに大きなものだったかは、レッドブルにエンジンを供給して2010年から4連覇してきたルノーが、昨年大苦戦していたことでもわかる。7年ぶりにF1に復帰するホンダがこの時期、苦労していることは当然といえば当然のことなのである。そして、そのことはマクラーレン・ホンダのチーム関係者全員自身が自覚している。 80年代にマクラーレン・ホンダでチーム代表を務め、現在はマクラーレン・グループのCEOを務めるロン・デニスは次のように語る。 「私たちは山登りをスタートしたばかり。頂上にたどり着くまでには、時間がかかるものだ。いま大切なことは、山登りするための準備を十分に行っておくこと。なぜなら、われわれが登るべき山は世界最高峰の山なのだから」 現在のF1はシーズン中のテストが自由にできず、今年は2回の合同テストしか行われない。さらに新しいパワーユニットは、参戦時に一度ホモロゲーション(認証)を受けると、その後は決められた範囲内での改良はできるものの、基本的に同じパワーユニットを使用しなければならない。 2015年に参戦を開始するホンダのホモロゲーション締切日は、3月2日。それ以降は性能向上を目的とした開発は原則禁止となっているため、開発することができるのは今しかなく、すでに昨年の同時期にホモロゲーションを受け終えているほかのエンジンメーカーのパワーユニットと、信頼性を比較すること自体に無理があるといえよう。