パッキャオ推薦選手が明かした那須川天心“強さ”の正体
「3ラウンドに修正できたけどちょっと遅い」 レフェリーストップによるTKO勝利にも天心に満足感はない。 「試合で経験するしかない。次は右を当てられるか。意識するより自然に出るものがいい。無意識でつめられるような練習不足だと思う」 3月のRISEトーナメントの1回戦が終了した時点では「RIZINの話は聞いていない」と語っていた。パッキャオとRIZINのプロモート協力契約が電撃的に決まり、天心のカードが決まったのも直前で「対策はまったくしていない。データもない。準備時間もなかった。自分を高めることしかやっていなかった」という。 しかも、本当のパッキャオの“刺客”でなかったという問題まで浮上。その心理的影響については「特に何もなかった」と言うが、「パッキャオがついてくるからどれだけレベルアップしてくるか」と事前に警戒していた天心にしてみれば複雑な心境だったに違いない。 それでも食事面も含めた大規模な肉体改造に取り組んでいる最中で「楽に倒す」ためのパワーを養成する作業の効果は見られた。 3ラウンドにたたみかけたラッシュには相手を圧倒するパワーと迫力が溢れていた。それでも試合後、天心は肉体改造についても「いい部分、悪い部分が見えてきた。どこがダメかの反省点がたくさん出ている。改善して修正したい」と納得していなかった。 TKOで敗れたビアグタンは、左目の下にアザを残した痛々しい顔で記者会見場に現れた。 「試合が急に決まり100%の準備では臨めなかったが、天心のスピードについていけなかった。天心は直感力というか、反射神経が優れている。こっちが100%で打っても、それがスローモーションのように見えているんじゃないか。だが、彼と戦えてハッピーだよ」 爽やかな表情で天心の“凶器”を語ったビアグタンはこう続けた。「健康な体で試合を終われて良かった」 言い換えれば“壊されなくて良かった”ーーである。それほどの力の差を感じて戦っていたのである。 フィリピンの英雄、パッキャオからは「ベストを尽くしなさい。勝っても負けても関係ない。ベストを尽くして試合を楽しめばいい」と試合前にアドバイスをもらった。それが6階級制覇を成し遂げフィリピーノドリームを実現したレジェンドの哲学なのだろう。 リング上で天心もパッキャオに「強いね」と言われた。 「凄い人は多くを語らないんだと思った(笑)。オーラ?感じました。なんだろう。大領領になるかも、という人の圧がありました」 大晦日に体重差、キャリア初のボクシングルールの“ハンデ”のあるエキシビションマッチで戦い、打ちのめされたメイウェザーは、うんざりするほど、多くを語り続けていた。どこか皮肉に聞こえた。