江籠裕奈「大人のかわいいにも気づいてね」という思いを込めて
“自分が好きな自分”でいられるのが一番だと思う
――リード曲「Hello Happy My Life!!!」は、早い段階で作りはじめていたのでしょうか? 江籠 はい。リードなので、アルバムのテーマが決まってすぐに、曲のテーマも話し合いました。デモを聴いたときセリフパートがあったのが印象的で、「ここに、頭の中で考えていることを入れてみたら面白そうだね」という話があがって。ごちゃごちゃとした思いをセリフにして入れることにしたんです。デモの段階よりもセリフパートを長くしてもらって。 ――へえ、そんなアレンジもしていたんですね。 江籠 セリフだから、決まったメロディに言葉を当てはめていく本来の作詞よりも、言いたいことを入れやすかったです。脳内でいろんな感情の登場人物がしゃべっているようなイメージで書き進めていきました。でも……一方で完成が一番不安な曲でもあったんですよ。「ほとんどセリフだけど、これがどんなふうに“曲”になるんだろう?」って。 ――ともあれ、ファンのみなさんは最初にMVでこの曲と出会っているじゃないですか。映像もメロディも歌詞もすべてインパクトがあってガツンときて、すべてが頭に残って。この曲の出会い方としては、理想形だったんじゃないかなと思います。 江籠 たしかに。今回書き下ろした6曲は、全部「いいな」と思えるくらい満足しているんですけど、この曲はちょっと存在感が違って。リード曲でMVを作ると決まったとき「だったらやっぱり、これがリードだよね」と改めて思うくらい、しっくりくる感じがありました。 ――ちなみに、この歌詞のなかには江籠さんが日頃考えていることも入っている? 江籠 それは……入ったり入らなかったり、ですね。 ――サビに〈最後に決めるのは いちばん心踊る方〉とありますが、江籠さんもそうやって決めてきたのかな?とちょっと気になっていて。 江籠 あ、そこはそうですね。私は、“自分が好きな自分”でいられるのが一番だと思うんです。自分以外の誰かにも影響が及んでしまう場合はまた別ですけど、自分ひとりに関わる選択であれば迷わず自分らしいほうを選びたい。 ――例えば、江籠さん自身はどんなときにそういう選択をしましたか? 江籠 わかりやすいところで言うと、ツインテールですかね。一時期「ツインテールはしないほうがいいよ」と言われていて、なんとなく従っていたんですけど、「でも私、ツインテール好きなんだよな」と思って。 ――そこからツインテールを解禁したと。 江籠 はい。「自分がなりたい自分でいいじゃん!」って。で、きっとみんなもそんなふうに「自分らしく生きたい」「自分が好きな道を選びたい」と思っているけど、できていない人のほうが多いと思うんですよ。 ――無意識にその欲求を押し殺している可能性がありますね。現代の人たちは。 江籠 だからこそ、この曲の中から「自分がなりたい自分に!」というマインドを感じ取ってもらって、ちょっとでも誰かの希望になれたらいいなと思っています。決して押し付けるわけではなくて、「そういう世界があったら幸せだよね」というメッセージです。 ――また、「いくつになっても可愛くいたい♡」からは、歳を重ねることへのリアルな心情を感じました。 江籠 年齢を感じさせないのがアイドルのいいところだと思うんですけど、アイドルじゃないオフの自分を客観視したときに、「大人だから年相応の格好をしないといけないのかな」「かわいいに憧れていてはダメなのかな」と、急にリアルに感じてしまう瞬間がある気がするんです。その気持ちに寄り添うアイドルソングはあまりないと思うので、作ってみました。「いくつになっても可愛くいたい♡」は、私がいつかの七夕のとき短冊に書いた願いごとでもあって、今も変わらずベースにある願いなんですよね。 ――女性アイドルは、いまだに賞味期限が決まっているように思います。江籠さんはそういう世間一般のイメージをどう捉えていますか? 江籠 やっぱり、男性アイドルと比べて年齢に関しては言われやすいですよね。年齢を感じさせない振る舞いやパフォーマンスをしているのに、「もう○歳だから」と、“なぜか”言われたりする。それだけ、若くてキラキラしている人たちこそアイドル、というイメージが定着してしまっているのかもしれないですね。だから私は、「大人もかわいくていいよね」「大人のかわいいにも気づいてね」という思いをこの歌にしました。