【ベトナム】企業総合価値、500社選出 ペトロベト1位、ESGなど評価
ベトナムの調査会社ベトリサーチが企業価値を多面的に評価した「価値創造企業」の上位500社「バリュー500」を初めて発表し、国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム、PVN)が1位となった。事業規模や業績だけでなく、イノベーションや環境・社会・企業統治(ESG)への取り組み状況を評価したランキングで、ペトロベトナムはエネルギー移行への取り組みや社会貢献活動などが評価されたとみられる。日系ではホンダ・ベトナム(HVN)が30位にランクインした。 バリュー500は、企業の売上高や利益などの業績に加えて、平均賃金や人事規定などの労働環境、イノベーションや研究開発(R&D)への投資状況、コンプライアンス(法令順守)やESGへの取り組み状況などの評価に基づいて順位付けをしている。調査期間は2023年12月~24年8月。 1位は、石油・ガスの採掘などを手がける国営ペトロベトナムだった。同社単体での23年連結売上高は前年比4.1%減の187兆6,180億ドン(約75億4,200万米ドル、1兆900億円)、税引き後利益(純利益)は22.6%増の20兆3,730億ドンで事業規模は国内最大級だ。 近年は従来の化石燃料から液化天然ガス(LNG)や再生可能エネルギーの開発へとエネルギー転換を進め、デジタル技術の導入にも取り組んでいるほか、23年には約7,000億ドンを貧困層向けの住宅支援や教育・医療支援など企業の社会的責任(CSR)活動に充てており、こうした取り組みが評価された。 2位はベトナム軍隊通信グループ(ベトテル)だった。同社は23年の税引き前利益が前年比2.6%増の46兆3,300億ドンと過去10年で最高を記録。半導体チップや第5世代(5G)移動通信システム、人工知能(AI)など新技術の研究開発を進めている。 3位は韓国サムスン電子の現地法人サムスン・ベトナム。22年末に同社最大規模の研究開発(R&D)センターを首都ハノイで完成させ、半導体や人工知能(AI)の研究開発を積極的に進めている。 4位以下は◇国営ベトナム投資開発銀行(BIDV)◇国営ベトコムバンク◇IT最大手FPTグループ◇乳業最大手ビナミルク◇複合企業ビングループ◇国営ヴィエティンバンク◇軍隊商業銀行(MB)――の順だった。 ■サントリー、エースコックも50位以内 日系では30位にホンダ・ベトナム、34位にサントリー・ペプシコ・ベトナム・ビバレッジ(SPVB)、49位にエースコック・ベトナム、55位に第一生命ベトナム、94位にイオンベトナムなどがランクインした。 ホンダ・ベトナムは23年7月に、30年までに工場の二酸化炭素(CO2)排出量を19年比で46%削減する目標を発表。電動バイクの本格投入の検討やガソリン車の燃費向上などに取り組んでおり、自社のバイクや自動車から排出されるCO2の削減も進める方針も示した。同年10月には同社初のハイブリッド車(HV)モデルとなるスポーツタイプ多目的車(SUV)の新型「CR―V」を発売した。 ■97%がCSR実施 500社のうち売上高が最大だった事業分野は、エネルギーで合計売上高は1,939兆ドン。電子機器と金融がどちらも約1,500兆ドンで続いた。純利益では金融が群を抜いて高く合計額は253兆ドン。次いでエネルギー、情報通信となった。 ESG・イノベーションへの取り組みへの評価指標は、金融分野が最大で、物流、不動産、エネルギー、情報通信、小売りが続いた。 ESGへの取り組みについては500社のうち、96.5%の企業が社会的責任(CSR)を実施、82.7%が製品・サービスの環境負荷を削減、75.9%が持続可能な利益確保に向けた成長戦略を策定していることが分かった。一方で、エネルギーや資源の効率化に向けた取り組みに成功している企業は46.6%と半数に満たず、ベトリサーチは環境負荷を最低限に抑えつつ事業効率を向上させるためにも企業がより努力すべき点だと指摘した。 イノベーションへの投資については、ランクインした企業の多くが重要視しており、競争力や業績向上に向けて統合基幹業務システム(ERP)やAIなど新技術を積極的に取り入れていることが分かった。82.8%がデータの保護やサイバーセキュリティーの強化を実施、65.5%がクラウドサービスを活用、79.3%が経営管理ソフトを導入して経営効率化を図っている。