F1開幕直前。なぜマクラーレン・ホンダはトラブルを多発させているのか?
10チーム中9位に終わったF1復帰初年度となった2015年から、選手権6位に浮上した昨年のホンダ。3年目のシーズンへ向けた開幕直前のバルセロナ合同テストで、しかしホンダは初日から厳しい現実を突きつけられた。走り出した直後にパワーユニット(PU)に油圧が落ちるという不具合が生じたのである。ホンダはマシンを緊急ピットインさせ、いきなりパワーユニットの交換を余儀なくされた。 トラブルは2日目も続いた。今度はエンジン本体の6気筒のうちのいくつかが壊れてしまったのだ。壊れたエンジンはすぐさま栃木県にあるHRD Sakuraに送り返され、調査が行われた。 ホンダはF1復帰初年度の2015年にも、多くのトラブルを起こしている。しかし、2年目の昨年は信頼性を大きく向上させ、安定してポイント争いを演じた。そのホンダがなぜ3年に入って、再びトラブルを多発させてしまったのか。 それはPUが昨年と今年で大きく改良が加えられたからだ。 昨年までF1には「トークン制度」というPUの開発を制限するシステムが存在していた。そのため、大きな改良を行うことができなかった。だが、そのトークン制度が昨年限りで撤廃。性能面で後れを取っていたホンダは、このチャンスを生かしてPUを大きく変えるという決断を下したのだ。 「一番大きな変更はターボとコンプレッサーのレイアウトを見直し、重心を下げたことです」(長谷川祐介総責任者) これまでホンダのターボとコンプレッサーは、PUをコンパクトにすることを優先して、エンジンのVバンク角の中に収められていた。それを今年からはVバンクの外に出すことで、重心を下げたのだ。 変更されたのはレイアウトだけではない。PUの心臓である燃焼室にも画期的なシステムが採用された。ホンダは具体的に明言こそしていないが、「かなりチャレンジングだった」(長谷川総責任者)と語っていることから、現在F1界でライバル勢が採用しているタービュラントジェットイグニション(TJI)を導入したと考えられる。