血管年齢はいつからでも若返る! 中高年ほどストレッチに取り組むべき理由
前回まで運動生理・生化学の専門家である立命館大学・家光素行教授にストレッチについての最新情報を伺ってきました。最終回は中高齢者へのメッセージです。 【動画】オフィスで簡単にできるハムストリングスのストレッチ
――ストレッチに健康増進の効果があるということは、中高年の人が取り組むメリットも大きいと言えますね。 「そう思いますね。もう自分はトシだから今さら何をやっても無駄と思ってしまう方もいるんですけど、じつは血管年齢はいつからでも若返ることが可能なんです」 ――そうなんですか!? 「ストレッチやウォーキング、ジョギングなどの運動をはじめたり、食事を見直したりすることで、何歳からでも血管年齢は若返ります。ですから、とにかくできることからはじめるのが大事だと思いますし、私も相談を受けた時にはそのようにお話ししています。逆に言えば、若くても運動習慣がなかったり、栄養面に問題があったりすれば、年齢よりも血管が老けてしまう可能性はあると言えますね」 ――運動習慣ということで言うと、手軽にはじめられるストレッチは選びやすいですね。 「そうですね。血流のことだけを考えるとウォーキングやジョギングのほうが効果的だと思いますけど、それを継続するとなると心身ともにエネルギーが必要になりますし、中には腰やヒザが痛くて走るのはキツいという方もいるでしょう。高齢になればなるほど、その傾向は高まると思います。その点、ストレッチなら場所も時間もそこまで必要としませんし、通勤中や仕事中などに行なうこともできます。それで動脈硬化に限らず、さまざまな健康効果を得られると思いますので、まずは気楽にはじめてみてほしいと思います」 ――簡単にできるわりに、得られる効果は大きいということですね。 「年齢を重ねると、体全体の柔軟性が失われることで転びやすくなったり、疲れやすくなったりということもあります。柔軟性というのは体力の重要な要素の1つなので、強度の高い運動をしなくてもストレッチが体力向上の一部に貢献できると思います。とくに運動から離れてしまっている中高齢者がストレッチをすることは意義があると思います」 ――日常に取り入れていくと、いろいろなプラスの効果がありそうです。 「どんな人でも加齢とともに体の衰えを自覚していくと思います。中年になると社会的な立場もあってストレスを感じやすくなりますし、睡眠の質も悪くなってきたりと体の変化を感じはじめます。そこで『じゃあ運動をするか』と思ったとしても、継続できなかったらあまり意味がありません。いきなりランニングを生活に取り入れられる方もいるかもしれませんが、すぐに疲れたり足が痛くなったりしてあきらめてしまう方もいるでしょう。ですから、運動をはじめる際のハードルを下げるという点でもストレッチは有効だと思います。もちろん中高齢者だけでなく、20~30代の若い方でも将来の健康のために軽いストレッチから体を動かしていくことをオススメしたいですね」 ◆本記事は日本ストレッチング協会 協会誌「CREATIVE STRETCHING Vol.65」で紹介された内容を再編集したものです。
家光素行(いえみつ・もとゆき) 立命館大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授。2003 年、筑波大学大学院医学研究科修了(博士:医学)。2004年、筑波大学大学院 人間総合科学研究科助手国立健康・栄養研究所客員研究員などを経て、2014年より現職。日本体力医学会監事、日本運動生理学会評議員などを務め、心血管疾患、糖尿病、肥満などにおける運動療法と運動効果の機序解明について多くの論文を報告している。
取材・構成/森本雄大