街頭でいきなり「金を出せ」 ナイフで刺される事件も…2度目の南米挑戦で直面した異例環境【インタビュー】
ナイフで刺される強盗事件、引退を決意した経緯を明かす
チームで与えられた役割は“潰し役”。パラグアイで学んだずる賢いプレーを買われ、成長していった。そんな折、ボリビアでは一歩間違えれば死んでいたかもしれない経験も。ご飯を食べに出かけた際、街頭から現れた人物に銃を突き付けられる。「金を出せ」。マリンボブ氏はこれまで、ボリビア生活で何度も同じような状況を体験。慣れた様子で財布と携帯を差し出した。 すると相手も「どうしてそんなに慣れているんだ?」と語りかける。自身のサッカーの話をすると、思いのほか盛り上がった。しばらく銃を突き付けられながら会話を交わしていると、相手の仲間が交渉に手間取っていると勘違いをしてうしろからナイフでマリンボブ氏の腰あたりを刺してしまう。 「最初は何が起こったか分かりませんでした」 激しい痛みに襲われ地面に倒れる。強盗2人は「ナイフが折れた…」「なんで刺したんだ? 刺す時は相手が金を出さない時だ」などと会話したのち「すまん、俺ら行くわ」と言葉を投げ捨てその場を去った。幸いナイフはかなり錆びていたため、腰骨に当たって折れてしまったようだ。そこまで深い傷を負うことなく、1か月ほどで傷も塞がった。今もその傷跡は、背中に残っている。 「パラグアイより、ボリビアのほうが治安悪かったですね。ラパス、サンタクルスの2大都市は特に治安がやばい場所でした」
引退決意の理由「心が砕けてしまいました」
そんなボリビアで3年半プレーしたマリンボブ氏は、ある時1人の選手に出会って今度こそ引退を決意する。同じチームだった40歳近い年齢のウルグアイ人FWフアン・ダニエル・サラベティだ。 「ユース時代にずっとアルバロ・レコバ選手の控えだった選手」だというベテランFWの実力を目の当たりにした当時26歳のマリンボブ氏は「彼、とんでもなく上手くて!」と衝撃を受ける。 「とんでもない実力者だったんだなと実感しました。もう俺は年齢的にきついかなと…。38歳でこれだけうまい。その衝撃で心が砕けてしまいました」とリアルな心情を語った。そうしてボリビアで挑戦を終えたマリンボブ氏は、日本で新たな道へ進むこととなる(第3回へ続く)。 [プロフィール] マリンボブ(まりんぼぶ)/本名、松本磨林(まつもと・まりん)。1988年12月30日生まれ、埼玉県出身。オリンピアU-20(パラグアイ)―ウマイタ・フットボール・クラブ―ヘネラル・カバジェーロ・デ・カンポグランデ―サンマルティン(ボリビア)―ラ・マキナビエハ・ミルトン・メルガール―デポルティーボ・アレマン・デ・スクレ。18歳で単身南米へ。GKから半年でフィールドプレーヤーに転身。南米サッカーを8年経験し帰国。現在はピン芸人“マリンボブ”として、スマイラーズ(芸人で構成されたサッカーチーム)に所属する。日々自身のSNSで発信する“南米サッカーあるある”が人気を博す。
FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko