センバツ高校野球 常総学院、8強ならず 終盤の粘りに温かい拍手 /茨城
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は第8日の27日、常総学院は2回戦で中京大中京(愛知)に5―15で敗れた。機動力を絡めた相手の攻撃にかき回され、守備の乱れもあり大量失点。打線は終盤に追い上げる粘りを見せたが、2015年以来6年ぶりのセンバツ8強はならなかった。それでも力いっぱい挑んだ選手らに、スタンドからは温かい拍手が送られた。【長屋美乃里、辻本知大】 4投手が打ち込まれ、大量リードを奪われる苦しい展開となった。それでも応援に駆けつけた保護者や学校関係者ら約450人は反撃を期待し、懸命に手をたたいた。 常総学院の攻撃につながりが生まれたのは0―8で迎えた五回。鳥山の中前打を足がかりに1死満塁の好機を作ると、宮原が押し出し四球を選んで1点を返した。「よし、まだまだこれから」。反撃機運は高まったが後続が凡退。「惜しい……」とスタンドで応援する野球部員らは悔しさをにじませた。 劣勢ムードを吹き払おうと応援指導部の生徒らが太鼓をたたき、演舞を披露した。えんじ色の学ラン姿の吉渓昌弥団長(3年)は「応援団が負けると思ったら絶対だめ。野球部を信じて、自分たちは最終回まで勝つ気満々です」ときっぱり言い切った。 強い思いが伝わったように、終盤になって打線は持ち味の粘り強さを発揮した。10点差を追う八回、代打・柴田の押し出し死球と宮原の中犠飛で2点を挙げると、伊藤琢、三輪は連続適時打。「行け! 行け!」。ダイヤモンドを駆け抜ける選手らの姿に、思わずマネジャー陣の声が漏れた。この回計4点を挙げ、三輪の母佳子さん(44)は「なんとか、つなぐ野球で打線を切らさずに得点してくれた」と笑顔を見せた。 しかし、粘りもそこまでだった。九回の攻撃は3人で打ち取られ、ため息とともにゲームセットのサイレンを聞いた。野球部OBで今春卒業した益岡隼海(はやと)さん(18)は肩を落とす後輩らを見つめながら「この負けをどう捉えるか」と話した。自分たちが立てなかった夢の舞台で2試合を経験することができた。「これだけ点差をつけられたからこそ、夏はものすごい勢いでやってくれるはず」と奮起を期待した。 ◇島田監督にエール ○…常総学院の柳下健一教諭(58)は、野球部の応援を創部当初から支えてきた。島田監督がエースだった1987年のセンバツは補欠からの繰り上げでの初出場だったため「準備が全然間に合わなくて(試合当日まで)あっという間だった」と振り返り、「私はずっと『島田応援団』です」と笑う。今年はコロナ禍の影響で声を出しての応援ができないが「ここに来られるだけでもありがたい」とグラウンド上の選手に熱い視線を送った。試合は大差で敗れたが「残念だけど終わりじゃない。このチームをもっと強くして夏に向けて頑張ってほしい」と、島田監督にエールを送った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇好投手と対戦「自信に」 常総学院・太田和煌翔二塁手(2年) 3点を追う三回、先頭打者として打席に立った。相手は大会屈指の速球派右腕・畔柳。 1ボールからの2球目、高めに浮いた直球を右前へとはじき返した。「直球を狙っていた。きょうはボールがよく見えました」。この試合のチーム初安打にベンチは沸いた。 開幕前の練習試合では思うように球の見極めができず、結果が出せずにいた。「なぜだろう」と自問自答するうちに、体が開くことが不振の原因だと気づいた。体が開かないよう逆方向を意識し、コンパクトなスイングを心がけると徐々に調子は上向いた。センバツの1回戦の敦賀気比戦では1安打し、自信を取り戻していた。 この日対戦する畔柳を念頭に、速球対策をしていたというが「伸びも切れも思っていた以上だった」。そう言いつつも、好調ぶりは第2打席以後も続いた。五回は四球を選んで得点機を広げると、8点差で迎えた七回は「負けていたし、食らいつかないと」とチェンジアップを中前へ運んだ。プロも注目する好投手を相手に全打席出塁してみせ、「自信につながった」と胸を張った。 チームは負けたが、スタンドから応援していた母三樹さん(47)は「逆転まではいかなかったが、結果を出してくれてうれしい」と目を細めた。名前に込められた意味は「きらめいて羽ばたいてほしい」。夢の舞台で、名前に恥じぬ輝きを見せた。【長屋美乃里】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦 中京大中京 012501024=15 常総学院 000010040=5