さらば府中牝馬S! “秋の名物重賞”を制した名牝たちを振り返る
秋の東京開催の牝馬限定重賞として親しまれてきた府中牝馬ステークスだが、来年からはレース名をアイルランドトロフィーに変更して施行されることとなった。レース名自体は「マーメイドS」を名称変更するため来年以降も残るが、“秋の名物重賞”としては今年で一区切り。そこでこの機会に、府中牝馬Sを制して飛躍した馬を紹介する。(馬齢は現行の表記で記載) 【写真】府中牝馬Sで復活を遂げたメジロドーベルの蹄跡 まずは93年のノースフライトだ。後の名マイラーだが、当時は3戦2勝の3歳馬。前走の900万下で5着に敗れての格上挑戦だった。実績では見劣ったが、50kgの軽ハンデに加え、素質も評価されて、4番人気でのゲートイン。レースでは好位追走から抜け出すと、パーシャンスポットの追い上げを3/4馬身凌ぎ、重賞初制覇を果たした。その後はエリザベス女王杯に参戦し、ホクトベガの2着に健闘。古馬となって以降はマイル路線を歩み、安田記念、マイルCSを制した。 続いては98年のメジロドーベルだ。2歳時に阪神3歳牝馬S、3歳時にオークス、秋華賞を制覇。既に名牝の地位を確立していた。しかし、3歳時の有馬記念以降は5連敗。そんな状況下、必勝を期して6戦ぶりの牝馬限定戦参戦となったのが、4歳時の府中牝馬Sだった。初の58kgが不安視されたが何のその、単勝1.7倍の支持に応え、グレースアドマイヤをハナ差抑えて5つ目の重賞タイトルを獲得。この勝利で勢いに乗り、続くエリザベス女王杯では4つ目のGIタイトルを獲得することとなる。 最後に取り上げるのは00年のトゥザヴィクトリーだ。3歳時に桜花賞で3着、オークスで2着となったが、GIタイトルには手が届かず。それでも4歳夏を迎え、クイーンSで重賞初制覇。そして秋初戦となったのが府中牝馬Sだった。初騎乗の四位洋文騎手を背にスローペースの逃げを打つと、直線で加速。上がり3Fをメンバー中最速の33秒5でまとめ、4馬身差の圧勝を収めた。続くエリザベス女王杯では4着に敗れたが、年末の阪神牝馬特別で3つ目のタイトルを獲得。翌年にはドバイワールドCでキャプテンスティーヴの2着に健闘し、秋のエリザベス女王杯で遂にGI馬の称号を得ることとなる。 今年の府中牝馬Sにはブレイディヴェーグ、マスクトディーヴァなどがエントリーしており、近年では屈指の豪華メンバーとなるだろう。“最後の”府中牝馬S覇者となり、秋のGI戦線に弾みを付けるのはどの馬か。見逃せない一戦となることは間違いない。