250ccビジネス車、スーパーバイカーズ、オフロードスクーター…80年代後半の「異色ジャンルバイク」グラフィティ
■ホンダ AX-1(1987年12月発売)「新しい視点のバイク=生活コンポーネントギア!?」 「テニスやスキーを楽しむように、パソコンやオーディオに興味があるように」バイクも気軽におしゃれに遊べる道具にしたいという、あまり染み入らない主張で登場した『生活コンポーネントギア』のAX-1。 軽量で足が長めの車体は前19/後16インチを履き、街なかで軽快に走れてオフもそこそこイケそう。いわゆるオン/オフで走れるデュアルパーパス車だが、あとひとひねり別の提案をしたかったのは伝わってくる。 フレームマウントのメーターバイザー一体型デュアルヘッドライト、チューブレス対応のアルミキャストホイールにその主張が込められ、新開発水冷単気筒(最高出力29ps)は量産4ストで初採用というスリーブレスNSメッキシリンダーで気合が入っている。……が主流にはなれずに1990年代の半ばに国内市場からは撤退。思いは伝わりにくかったものの、モデルの素性はよかった惜しい一例。当時価格41万9000円。 ■ヤマハ TDR250(1988年1月発売)「レプリカブーム後を模索したハイパー・スーパーバイカーズ」 オンロードレプリカブーム以降のバイクトレンドを模索する動きはこの時期から盛んだったが、ヤマハの提案の一例がTDR250。思い切りスパルタンな性能を、ストリートとオン・オフシーンで味わわせるもので、エンジンはTZR250系の水冷並列ツイン(最高出力45ps)をベースに、2ストで世界初というデジタル進角CDI点火方式を採用。これを新設計ダブルクレードルフレームに搭載。前18/後17インチ採用で、デュアルパーパス系としては、ややオン寄り指向。 TDRは、北米で1979年から数年間人気を博したスーパーバイカーズ(ロード、ダートトラック、モトクロスのミックス競技)レースに着想を得たモデルと言え、レプリカブームの中にあってその異色の高性能車は一時期人気を博した印象はあるものの、一代限りで終了。価格は47万9000円。 ■ヤマハ BW’S(1988年4月発売)「プレイ・スクーターで、なにプレイする!?」 ロングストロークの前後サスペンションを採用した高めな車高と、太めのブロックパターンタイヤ、遊び心のあるデュアルヘッドライトなどが特徴的な異色スクーター。「フィールドを選ばないから楽しさも大きい」とアピールする同車は、「未舗装路やちょっとした荒れ地でのプレイ機能も兼ね備えた」と、スクーターの枠を越えた走りをねらったモデル。 ダートを走らせればそれなりの走破性能を見せたと言われるものの、50ccの初代モデルはその価値を十分見い出されることもないまま一旦終了。その後1998年に2代目が意匠と中身をブラッシュアップして新登場するが、これは台湾ヤマハ製造モデルの正規輸入販売車だった。空冷2スト単気筒エンジン搭載で最高出力6ps、価格14万9000円。 その2代目も長続きはしなかったが、2012年、国内正規モデルにBW’Sの車名が突如として復活。時代に即しエンジンは水冷4スト単気筒となったが、そのコンセプトは受け継ぎ『PLAYゲンツキ』のキャッチコピーが与えられていた。 ■ホンダ CD250U(1988年4月発売)「ヤマハYDに負けじと軽二輪版CDを投入。地味に火花を散らした250ビジバイ対決」 高速道路にも乗れるビジネスバイクという、ありそうでなかったカテゴリーをYD250で狙ったヤマハに対抗し、ホンダもCD250Uを投入。YDとの違いは、最初からシングルシート(後部は荷台)とダブルシートタイプを用意したことで、カラーやデザインは125ccクラス以下のベンリィCDシリーズを踏襲しつつ、フロントフォークにラバーブーツを装着するなど、トラッドな雰囲気も醸し出す。 エンジンは旧型レブルやその前のアメリカン250Tシリーズ、元をたどればCD125Tに行き着く空冷4スト2気筒で最高出力22ps。実用的で扱いやすい特性は、仕事でも活躍してくれそうだが、当時の市中のバイク便などを見る限り、同胞から生まれたVT系ネイキッドのほうが数的に目立った印象。お仕事ライダーはもう少し上の性能と中古で値頃感の高いほうを選んだか。価格はシングルシート仕様が31万9000円、ダブルシート仕様が33万円。