本人も「初めての経験」と笑う“珍事”の末にツアー初勝利!岡村恭香が憧れの舞台でチャンスをつかむ<SMASH>
幸福感と同時に彼女がコートに持ち込んだのは、確固たる策だった。バプティストとの初対戦は、2020年1月の全豪オープン(ハードコート/四大大会)予選。その時は、相手のパワーに押し切られたが、「フットワークはあまり良くない」との印象もあった。 そこで今大会の予選では、テイクバックの大きなフォアサイドに、早いタイミングでボールを打ち込む。その戦術が、奏功している手応えはあった。ただ、相手の返球の処理に課題を残したため、その部分を修正し挑んだのが、今回の再戦だ。自信を持つフォアの強打に、ドロップショットやスライスも織り交ぜる幅の広さは、それら取り組みの結実だろう。試合終盤は、ケガのためか相手の動きが落ちはしたが、やるべきことを完遂した岡村が、自力でもぎ取った白星だった。 今大会で多くの幸運が巡ってきたのも、理由があってのことだろう。今季から岡村は、元世界24位の神尾米の門を叩き、練習環境も一新した。 「あと2年」と勝負の期日を区切り、「中途半端では終わりたくない。やめる前にトップ100に入りたい」と覚悟を決め、「どんなに厳しいことでも教えてください」と自ら神尾に頼み込んだ。その神尾たちからは「勝ちに行くためにも、勝ちにこだわりすぎない。練習したことを出す、ベストを尽くすとはどういうことかを教えてもらっている」という。 “ラッキールーザー”は、敗戦を受け止めた者にこそ、巡ってくる幸運だろう。その資格を手に、岡村がさらなる幸運をつかみにいく。 取材・文●内田暁