ゲームストップが乱降下で再注目、"ミーム株"再燃の行方
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。(最新のドル円相場は こちら ) ■ゲームストップをめぐり熱狂的な取引が繰り広げられた ロアリング・キティ(Roaring Kitty)というニックネームで知られるキース・ギル氏がX(旧ツイッター)に復帰し、ゲームストップ( GME )が乱高下となりました。 同氏は、2021年のミーム株(SNSなどで大きな注目が集まり、急騰する銘柄)ブームの牽引者だっただけに、多くの個人トレーダーたちを再び興奮させました。 上がゲームストップの日足チャートです。入れた2本の移動平均線は、上から20日、50日移動平均線の順番になります。 ロアリング・キティのXへの復帰を受け、5月13日のゲームストップは大きな窓を開けて取引をスタートしました。株価は一時110%を超える上昇となり、伴った大きな出来高でわかるように、個人投資家たちが同株へ一斉に押し寄せました。 翌日14日はさらに60%の上昇(瞬時+112%)となりましたが、最終的に陰線を形成して大引けとなりました。出来高は前日の量を上回り、正に熱狂的な取引でした。 一番右側のローソク足は5月17日です。終値は22ドル21セントですから、5月14日の高値から65.74%の急落となっただけでなく、ロアリング・キティが復帰した5月13日の安値も割っています。ミーム株などに手を出すのではなかったと後悔している人が多数いることでしょう。 ■テクニカル的要素のみで判断してみる ファンダメンタルズは考えないで、テクニカル的な要素だけで判断した場合、現在のゲームストップは買いでしょうか?あるいは、どんなことが起きたら同株を買うことができるでしょうか? まず現在の位置ですが、上昇する20日移動平均線がサポートになった可能性があります。ローソク足は、ほとんど実体のない同時に近い形ですから、このへんで下げ止まったと解釈したトレーダーも少なくないことでしょう。 次に注目したいのはRSI(相対力指数)です。終値は52.58になり、現在のように株がアップトレンドという状況では、40から60で下げ止まりとなる傾向があります。 さらに、アップトレンドではRSIの50がサポートになり、ダウントレンドでは50がレジスタンスになるという見方をしているトレーダーたちも多いですから、現在の52.58は買い準備を考える数値です。 赤い線は、高値となった5月14日から引いたVWAP(出来高加重平均価格、売買高加重平均価格)です。現在の株価はVWAPより下にあります。極めて単純な見方をすると、5月14日以来買った人たちの損益合計はマイナスであることを意味します。 言い換えると、株価がVWAPを上回ることは損益合計がプラスになり、投資心理が明るくなることを意味しますから、VWAP突破が買いシグナルとなります。もちろん、VWAPはレジスタンスになる可能性もありますから、突破にもたもたするようなら売り手たちが次々と参入してきます。 ■ミーム株は大きな損失の可能性 それではファンダメンタルズを見てみましょう。シーキング・アルファによると、バリュエーション(企業価値評価)はF、成長はCマイナス、利益はD、売上収益見通しはDという冴えない企業です。 最後に、エリザベス・グラビエ氏(CNBCファイナンス・レポーター)の言葉を記しておきましょう。 「ミーム株の大幅上昇はソーシャルメディアでの誇大宣伝の結果であり、必ずしも企業の業績によるものではありません。もちろん、大きな利益を手に入れるという可能性もあります。 しかし、急速な大幅上昇で株価はすぐに割高となり、その後には劇的な下落がやってきます。そのため、ミーム株への投資は大きな損失の可能性が高くなります。次のホットなミーム株を積極的に見つけようとするより、インデックス・ファンドに投資したほうが無難です」 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳