吉沢亮、初の手話表現で得たもの・不安払拭できた理由「知らないことに飛び込むのは怖いけど大事」【「ぼくが生きてる、ふたつの世界」インタビュー】
【モデルプレス=2024/09/27】モデルプレスの独自企画「今月のカバーモデル」で2024年9月のカバーモデルを務めたのは、映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(公開中)で主演を務める俳優の吉沢亮(よしざわ・りょう/30)。インタビュー前編では、吉沢がオファーを受けた際の心境や手話を使った演技で得たもの、さらには自身の思春期時代について聞いた。 【写真】吉沢亮の肉体美 ◆吉沢亮主演「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 本作は呉美保監督による9年ぶりの長編作品。原作は、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大氏による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」。 脚本は港岳彦が担当した。 吉沢は本作にて、耳のきこえない両親の元で育った息子・大の心の軌跡を体現。両親役には、ともにろう者俳優として活躍する忍足亜希子、今井彰人がキャスティングされている。 ◆吉沢亮、オファー時の心境・出演決意した理由とは ― まずは、オファーを受けた際の心境について教えてください。 吉沢:「そこのみにて光輝く」や「きみはいい⼦」などの呉美保監督の作品を、以前からめちゃくちゃ素敵だなあと思っていたので、どんな形になるかはわからないけれど、いつかはご⼀緒したいという思いがずっとありました。だからお話をいただいた時には、率直に嬉しかったです。でも、今回のような題材の作品というのは、僕⾃⾝経験がなかったですし、何も知らない無知な僕が⾶び込んでいいものなのかという不安が正直ありました。やりたいという思いはあるのですが、やっていいものなのかという思いもなんとなくあって、少し迷った時間があったんです。 でもプロットをいただいて読ませていただくと、純粋に普遍的な家族の愛で、僕らが普段⽣きていて感じていることの延⻑線上にある話だなと思いました。⾯⽩そうでしたし、挑戦してみたいという気持ちが強かったので、是⾮やらせていただきたい、と思いました。 ― オファーを受けた際には不安を抱いていたとのことですが、不安を払拭できた瞬間はありましたか? 吉沢:実際に撮影しながら、普遍的で誰もが感じられるものがある作品なんだろうなというのを感じて「置かれてる環境が特殊なだけで、ありふれた日常なんだな」と思ったときですかね。僕自身はそこまで反抗期はなかったんですけど、すごく理解できる部分がたくさんありました。 ― 今作はノンフィクションの実写化ということで、吉沢さんは主人公・大の中学時代からフリーター時代、社会人時代と成長の過程を演じています。そこに対する難しさや演じる上で意識していたことがあれば教えてください。 吉沢:最近リアルな10代のお芝居をする機会がなかったので、思春期時代を演じるときは、とにかく声を高くすることを心がけていました。「自分ももうおっさんになったんだな…」と思いつつ(笑)、当時の気だるさや、常にイライラしているような感覚は意識していたと思います。フリーター・社会人時代を演じた際は「家族の枠組みから外れて、知らない世界に飛び込んで行くことはこんなに怖いんだ」という気持ちや、知らない世界に触れることへの新鮮さも大事にしていました。 ◆吉沢亮、手話は撮影の2ヶ月前から練習 ― 今作では吉沢さんの自然な手話にも注目が集まっています。どれぐらい練習や訓練をされたのでしょうか? 吉沢:撮影の2ヶ月前ぐらいから、⼿話演出の早瀬憲太郎さんと⽯村真由美さんに⼿話を教えていただきながら、両親役の忍⾜さん、今井さんのお2⼈や他のろうの役者さんとのお芝居も、稽古のなかで⼀緒にやらせていただいていました。 ― ⼿話のどんなところが⼤変でしたか? 吉沢:⼿話を覚えること⾃体は、簡単ではないですが回数を重ねればできました。でもそれを会話にしていくということ、相⼿が何を⾔っているのかをちゃんと理解した上で、それに反応していくというところが⼤変でした。眉の動かし⽅1つ、顔の表情の1つひとつが⾔語になっているということも新鮮でした。普段お芝居をしているなかで、表に出さないお芝居がいいと思っていたようなところがあったんですが、⼿話をする上では“伝える”という思いをより強くお芝居のなかに反映させていくというのが必要で、それがすごく難しくて、純粋に勉強になりました。伝えるってやっぱり⼤事だなという、お芝居をする上でもすごく学びになりました。 ― 今回、手話を使った演技を通して得たものはありますか? 吉沢:“伝える”っていうものが前提にあってのコミュニケーションだから、すごくいいなって思いました。目を見て、自分が怒っているとか、イライラしているっていうものをちゃんと相手に伝える。生きていく上で大事なことだと思いましたし、すごく愛があるなと思って、僕は素敵だと思いました。 ◆吉沢亮、共演者から刺激 ― ⺟役の忍⾜さん、⽗役の今井さんとの共演はいかがでしたか? 吉沢: ⼿話はもちろんですが、お芝居していてもお2⼈から学ぶことは沢⼭ありました。2カ⽉ぐらい⼀緒に稽古してから撮影に⼊ったのですが、⽇常会話ができるほどにはうまくなれなかったけれど、お2⼈が僕にわかりやすいように⼿話をずっとして下さっていたので、最終的にはなんとなくお2⼈が⾔っていることは理解できるぐらいになれたかな、と思います。 今作には他にもろう者の役者さんが出演されているのですが、手話の稽古を兼ねたリハーサルをやったとき、特にお2人(忍⾜・今井)の手話は不思議と最初からすんなり入ってきました。本当にお2⼈の存在のおかげで、ちゃんとお芝居ができたと思っています。 ◆吉沢亮、自身の思春期時代を回顧 ― 今作で思春期時代の大はたくさんの葛藤を抱えますが、吉沢さんは思春期に不安だったことや、葛藤していたことはありましたか? 吉沢:小学1年生から中学3年生まで剣道をやっていたんです。親がすごく好きだったみたいで、男4人兄弟全員剣道をやらされていたんですけど、当時はバスケやサッカーに憧れがあったし、剣道の練習がとにかくキツくて。(道場は)夏は暑いし、冬は寒いし、最悪じゃん、って思っていました(笑)。辞めたくてしょうがなかったですし、1番葛藤していたんじゃないかなと思います。 ― それでも辞めなかったのはすごいです。 吉沢:辞めました(笑)。流石に限界がきて「無理、もう行かない」って。でも、剣道で学んだことはたくさんあります。アクションで剣を振るシーンをやらせていただくこともありますし、剣道はキツかったけど結局今に活きているなと思います。 ◆吉沢亮が語る“新たな世界へ飛び込む”ことの大切さ ― 今作を通して新たに発見したことや興味を持ったことはありますか? 吉沢:知らない世界に飛び込むことの楽しさは改めて感じました。僕自身も手話がわからない中で、お会いするまではどうやってコミュニケーションを取ったら良いのかわからなかったし、怖かったんですけど、実際にお会いして本当に素敵な人ばかりで。ちょっとずつコミュニケーションが取れていくこともすごく楽しくて、知らないことに飛び込むのは怖いけど、大事なことだなとすごく思いました。 ― 吉沢さんご自身は、新しい世界に踏み込むときに慎重になるタイプなのでしょうか? 吉沢:めちゃくちゃ慎重になると思います。形だけ完全に武装してから行くようなタイプです。でも、とことん準備するより、意外と何も考えずに飛び込むくらいの方が良かったりしますよね。 ― お仕事に対しても常に“準備”を大切にしていらっしゃるんですね。 吉沢:もちろん作品にもよるとは思うのですが、今回の手話のように特殊な何かが必要とされたときはめちゃくちゃ準備します。その道の人が見ても違和感がないと思ってもらえるレベルまではやりたいなと思っています。 ★インタビュー後編では、日々不安を解消する上で大切にしていることや、今後挑戦したい役などを聞いている。(modelpress編集部) PHOTO:赤英路 ◆吉沢亮(よしざわ・りょう)プロフィール 1994年2月1日生まれ、東京都出身。2019年「キングダム」で第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」、2022年のフジテレビ系月9ドラマ「PICU 小児集中治療室」では主演を務めた。近年の主な出演作は「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-」「クレイジークルーズ」(2023年)、「キングダム 大将軍の帰還」(公開中)など。2025年には「国宝」が公開予定。 【Not Sponsored 記事】
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