根室発釧路行き快速「はなさき」は1両編成、窓は全開、ワゴン販売があった
列車には快速「はなさき」の愛称が冠されている。花咲線には快速「はなさき」と「ノサップ」がある。北海道は他路線にも「狩勝」など愛称付きの快速気動車があり、石北線には「きたみ」という“特快”まである。へたに凝らない直球の命名に好感が持てる。 車内は夏のシーズンともあって観光客とおぼしき人でシートはそこそこ埋まっていた。かん高いうなり声をあげて快速は一路釧路に向かう。次の東根室はご承知のように本当の日本最東端駅。根室駅はあくまで有人駅としての最東端。東根室で途中下車はしなかったが、南と西は過去に制覇しているのでまあ、これで最東端駅も制覇!と勝手に自身の記録に残しておいて「残りは最北端の駅」と決意した。果たして残りの人生で北、つまり稚内を制覇できるかどうかは分からないが。 寒冷地だからか真夏なのに車内は非冷房。だから窓は全開だ。それでも扇風機はずっと回り続ける。肘を窓枠に置きその上に顎を乗せて進行方向を見ながら振動とにおいとともに列車旅を味わう。この快感。この風。これがいい。いろいろな虫が入ってきたが。
高校時代の真夏の東北鈍行一人旅の思い出が頭をよぎる。1970年代の旅の姿の再来だ。ああ、懐かしい。当時も夏の気動車の窓は当たり前のように全開だった。 さてお楽しみの時間がやってきた。根室駅で駅弁「さんま丼」を事前に買っておいたのだ。この弁当屋さんは“車販”としてワゴン車ごと同乗もしている。車内でも買うこともできたのだ。1両編成での弁当販売は珍しい。新幹線が車販をやめるご時世にうれしいこと。ちょうど昼時。900円で買った弁当の紙ひもをほどいていただく。パンフレットには「特製たれでふっくら焼いた根室特産品のさんま」とあり、沿線の風景を見ながら“高級魚”をおいしく味わった。ワゴン車とともに乗り込んだスタッフが車内を行ったり来たり。コーヒーを食後にいただいた。約50分後、厚床でワゴンは降りたが、丁寧に客へのお礼のあいさつまであったのはうれしい対応。 列車は原生林や草原、湿原などめまぐるしく風景を変えながら最高時速80キロくらいは出しながら快走する。想像以上の速度を出している。特に厚岸から終点釧路まで距離約50キロ、40分間を無停車で走り抜けるのは「快速」の名がだてではないことを見せつけた。