担当スカウトとして“最後のドラ1”…近藤真市さんがほれ込んだ高橋宏の右膝「できたのはチェンと杉内くらい」
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇10日 中日3―1ヤクルト(バンテリン) 4年前に「間違いなく1位だ」と確信した才能は、さらに大きな花を咲かせていた。高橋宏の熱投を、担当スカウトの1人だった近藤真市さんがスタンドで見守っていた。 ◆中日ドラゴンズ、SNS投稿に関してファンの皆様へお願い【写真】 「こうしてプロ野球を観客席から見たのは初めてかもしれません。今日は練習が午前中で終わったのと、宏斗が投げるから見てみようと思ったんです」 2022年から岐阜聖徳学園大の監督を務めている。日焼けした顔は、いかにもアマチュア野球の指導者だった。春季リーグは1勝差で優勝を逃したが、秋季リーグは開幕4連勝。悲願の全国大会出場に向け、学生とともに炎天下で汗を流す毎日だ。 近藤監督は現役引退後、投手コーチとして黄金期を支え、その前後はスカウトとして尽力した。「最後のドラフト1位」となったのが高橋宏。2人の間には浅からぬ縁がある。 「宏斗が通っていた託児所が、僕の家のすぐ近くにあったんです。そして父親は僕と同学年。長久手高で野球をやっていて、最後の夏は僕(享栄高)とやってるんです。僕は2安打打たれてるんですよね」 これらは指名してわかったこと。しかし、当初は慶大志望だったため、青い糸はつながっていないはずだった。高橋宏が高校3年生だった20年は、新型コロナの感染拡大により春夏の甲子園がなくなった。実戦は激減し、スカウト活動も大きく制限された中で、中京大中京高は距離を取っての練習視察だけは許可してくれた。通常は進学志望を表明した選手の調査は打ち切るが、中日は高橋宏の動向を追い続けた。 「速い球を投げる、スプリットが落ちる…。でも僕がほれ込んだのは右膝なんですよ。打者に向かっていく時に、ポンと(二塁側に)割れるから、前に押す力が生まれる。あれをできたのはコーチ時代ならチェン。他には杉内(俊哉)くらいなんですよ」 限られた視察機会で、一発で心を射抜かれてから4年。ヤクルト打線をねじ伏せたこの日も、18歳の時と同じように右膝は美しく動いていた。
中日スポーツ