「医療データで命を救う」 医師タッグで挑む、次世代医療インフラ
救急・集中治療の専門医である園生智弘は2017年8月、「医療データで命を救う」を掲げ、TXP Medicalを設立。同社は、次世代の医療インフラとして、急性期医療現場の記録業務の効率化と、研究用の医療データ蓄積を実現するプラットフォームを開発・提供。大病院向けの基幹プロダクト「NEXT Stage ER」は全国79カ所で稼働し、大学病院・救命救急センターでシェア約40%を誇る。 東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)パートナーの小林宏彰は、20年のシリーズAラウンドからTXP Medicalに出資し、社外取締役として支援している。小林が投資した理由とは。 小林:園生さんは古くからの友人なんです。私はベンチャー投資家になる以前、救急・集中治療医だったのですが、彼は医学部生のときの同級生で、大学病院でも共に臨床業務に従事していた同僚。その後は別々の道を歩むことになりましたが、定期的に情報交換をする間柄でした。 園生:私が起業して、小林さんがUTECに入ってからも、しばらくは友人として会っていたよね。VCからの資金調達は、お金と引き換えに外部投資家の意向を気にしないといけなくなるというデメリットを感じていたこともあって、あまり投資家として意識していなかったんです。 小林:確かに、自分のなかで腹落ちしないのなら、VCを株主に入れないほうがいいかもねって話をしていたよね。 園生:心境が変わったのが、2020年の春。ある医療ベンチャーへの投資をUTECが検討していたのですが、助言役として会議に参加させてもらう機会があったんです。UTECの人たちはクレバーかつスマートで、自分がつくりたい世界観に対して、こんな頭の切れる人たちが伴走してくれるなら意志決定のレベルがもっと上がるかもしれないと感じました。それで小林さんとも起業家と投資家という関係に発展していきました。 小林:当時のTXP Medicalは従業員が数人しかいなくて、園生さんは医師としても常勤しながら、ひとりで病院への営業に奔走していたよね。まだ事業計画はポンチ絵の状態でしたが、一定数の有償顧客を獲得していたし、医療データ事業のアイデアにも大きな可能性を感じました。プロダクトの導入先などを通じて商用の医療データベースを構築し、これを解析したレポートを製薬業界向けにサービス提供するというもので、うまくいく確信はもてなかったですが、園生さんに懸けてみようと思ったんです。バイタリティあふれる人だということはよくわかっていましたからね。同僚のころは、早朝にサーフィンをしてから出勤して、時には24時間以上働いて、ほかの人たちが疲弊しているなか、また別の病院に働きに行ってという行動力を間近で見ていました。