現職校長も嘆く「特色ない金太郎アメのような学校では…」 公立高68校中58校が“定員割れ” 一方で高まる私学人気、10年間で26→34%に増 県教委は統廃合に慎重姿勢
鹿児島県内の公立高校の“定員割れ”が深刻だ。県教育委員会が7日発表した国公立中学3年生の進路希望調査結果では、公立68校中58校で入学希望者が、今春の募集定員を下回った。学校現場や教育関係者からは、存続を危ぶむ声や学力低下への懸念が漏れた。 【写真】〈関連〉鹿児島県内の中学校卒業(予定)者の推移をグラフで確認する
「金太郎アメのような学校では共倒れになる」。定員割れが続く地方の県立高校長は嘆く。出前授業や学校説明会で懸命にアピールするが、好転の兆しは見えない。通学手段が細る地域も増えており「進学したい学校が地元になければ、スクールバスを持つ私立や通信制に流れていってしまう」と頭を抱える。 入学希望者が2024年度定員を下回る96学科の大半を鹿児島市外が占め、9学科では希望者が一桁にとどまった。 学習塾「昴」の西村道子会長(82)は「勉強しなくても合格できるような環境では学習意欲が湧かない」と学力への影響に危機感を示す。「定員を地域ごとに見直し、倍率が1倍を切らないようにするべきだ。特色を出そうと努力する私立に比べて、公立は手を打っていない」と手厳しい。 県内の中学卒業予定者は、今後10年以内に千人以上減る見通し。県私立中学高等学校協会の原田賢幸会長は「定員や教員採用数の見直しなど、少子化に合わせた学校経営が必要になる」と気を引き締める。今回の調査結果で、通信制の希望者が増えたことに関心を寄せ「多様な学び方が認知されてきた」とみる。
県教委高校教育課は、厳しい現状を踏まえ、各校で魅力化づくりに努めているとしつつ「どこででも学べる環境を整えるのが公立の役割。容易に統廃合などは進められない」とした。 ◇ 公立高校が苦戦するなか、私立高校への関心は年々高まっている。県私立中学高等学校協会によると、県内の高校入学者に占める私立の割合は、1994年度の26%が、2024年度は34%に上昇。今春の入試では、受験者が定員を大幅に超えた学校もあり、関係者からは「もはや滑り止めではない」との声も聞かれる。7月上旬、鹿児島市で開かれた私立中高の合同説明会には、過去最多の2552人が来場した。 2010年度始まった支援金制度は20年度、私立を対象に拡充された。世帯年収590万円未満(両親と全日制私立高生、中学生の4人家族で両親のどちらかが働いている)の場合、年39万6000円支給される。 文部科学省の調査によると、全日制私立高の平均授業料は約44万円。支援金を差し引くと、既に実質無償化されている公立高との差は小さくなっている。
南日本新聞 | 鹿児島
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