佐藤隆太×岡田義徳×塚本高史「THE3名様」なぜ愛される? 再始動を機に約20年の歴史を振り返る
2005年に、佐藤隆太、岡田義徳、塚本高史で実写化され人気を集めたショートドラマ「THE3名様」。石原まこちんによる、毎週4ページからなる連載マンガが原作で、これといった内容のない緩さから、こんなドラマ見たことがないとDVDのみでのリリースだったのにも関わらず話題を集めた。 【写真】お揃いのオレンジTを着た佐藤隆太、岡田義徳、塚本高史の3人 1話5分もない会話劇で、登場人物はほぼ3人、舞台はいつも同じファミレス。パフェを食べるおじさんを見つけてテンションを上げたり、ポテトフライを食べては勝手に味が落ちた理由を考えたりと、誰もが見たことや感じたことがある些細なことを、とくにオチもなく話していく。 ■佐藤隆太×岡田義徳×塚本高史×福田雄一監督だからこその世界観に注目! 3人組でワンシチュエーション繰り広げるドラマといえば、もたいまさこ・室井滋・小林聡美が三姉妹を演じた「やっぱり猫が好き」(1988~1991年、フジテレビ系)を思い出す人も少なくないが、それよりももっと内容は緩い。会話もつながらなくボソボソと単語だけを繰り返すこともあり、深夜のファミレスの隣で話していてもおかしくない、驚くほどタメにならないどうでもいい会話がほとんど。でもなぜか気になってしまうから不思議だ。 そんな会話を繰り広げるのが、佐藤・岡田・塚本が演じる20代の青年。佐藤演じるジャンボはいつも一生懸命。自由な2人に対してツッコミをいれたり、時にはまともなことを言い出したりするキャラクター。岡田演じるまっつんはマイペース。いつもは無口だけど、ときおり話す言葉にはなぜか重みがある不思議なタイプ。塚本演じるミッキーはリーダータイプで少し陽キャな一面もあるが、言っていることは無茶苦茶…と三者三様の個性を持ちつつも、自然と醸し出す脱力した雰囲気はどこか似ている。学生時代に「こんな男の子、クラスにいた!」と思わす、リアルさがそこにはある。 そもそも「木更津キャッツアイ」(2002年、TBS系)、映画「ROCKERS」(2003年)で意気投合した3人から、実写化したいとの声が上がって誕生した本作。つまり誰よりも彼らが作品を愛し、作品の魅力を理解していたので、実写版には原作の面白さがそのまま投影されているのだ。そこに原作に描かれていない会話のリズムや表情が加わることで、よりリアルで愛らしいキャラクターに仕上がっている。 当時、話題作に次々に出演する若手人気俳優だった佐藤・岡田・塚本が、男友達としかつるまない非モテなキャラクターをどのように演じるのか注目を集めたが、彼らの見せたジャンボ・まっつん・ミッキーは原作そのもの。一度見ると、彼ら以外の配役は考えられなくなってしまうほどだ。キャラクターへの理解度の確かさはもちろん、役だからという気負いのなさも、実写版「THE3名様」を成功に導いた要因の一つと言える。 そんな彼らが作り出した世界観を壊さずにシュールな映像作品に仕上げているのが、当時「ココリコミラクルタイプ」(2001~2007年、フジテレビ系)などでコント作家として活躍していた福田雄一監督。今でこそコメディー映画の第一人者と言われる福田監督が脚本と監督を担当し、バカバカしいけどなぜか惹かれる世界を見事に作りあげた。 ■鑑賞後、感動こそしないがなぜか気になる 鑑賞後、感動こそしないがなぜか気になる本作は、最初はオリジナルDVDとして発売され次第に話題を集めた。2010年の「THE3名様 マキシちゃってもよかですか?」までの5年間で全12タイトルのDVDが発売され、累計33万本を売り上げる大人気コンテンツに。コアなファンを次々と生み出していった。 注目を集めながらも俳優たちの成長と共に終わったと思われた本シリーズだが、2022年に再始動。佐藤の呼びかけにより3人が再び集まり、石原まこちんの完全書き下ろし脚本の映画「THE3名様~リモートだけじゃ無理じゃね?~」が劇場公開された。 根強い番組ファンは12年もの時を重ねた彼らがどのような姿で何を話しているのか…と様々な想像を繰り広げたが、スクリーンの中にいたジャンボ・まっつん・ミッキーはあのときのまま。時が経ったのがウソかのように、深夜のファミレスで変わらずどうでもいいことを話していた。その姿を見て、胸が熱くなった人も少なくなかったはずだ。 そして令和の時代に再始動した「THE3名様」は、2024年に「THE3名様Ω」としてFOD配信連続ドラマとして復活。夏には「映画 THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~」が公開予定されている。 これからも、夜な夜なファミレスで緩~い会話を繰り広げていくジャンボ・まっつん・ミッキー。この世界をのぞき見した人は、もしかしたら自分の街にもいるかも知れない? と思ってしまうほど。そんな魅力的な体験ができる「THE3名様」を楽しんでみてはいかが? ■文/玉置晴子 ■配信タイトル