2023年「人手不足」関連倒産 過去最多の158件 賃上げムードのなか、「人件費高騰」が8.4倍に急増
【要因別】人件費高騰が前年の8.4倍に急増
要因別では、「人件費高騰」が59件(前年比742.8%増)で、4年ぶりに前年を上回り、前年の8.4倍に急増した。「求人難」も58件(同114.8%増)と前年の2.1倍に増加した。 「従業員退職」は41件(同46.4%増)で、2年連続で前年を上回った。 コロナ禍から停滞していた経済活動が本格的に再開し、人手不足が深刻さを増している。 人材確保のための賃上げを避けられず、資金繰りに余裕がない企業は人件費上昇などのコストアップが資金繰りを圧迫している。一方で、賃上げが難しい企業は事業維持・発展のための人材採用が進まず、受注機会の喪失から業績拡大が進まない悪循環に陥っている。
【産業別】10産業のうち、7産業で前年を上回る
産業別では、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と金融・保険業、不動産業を除く7産業で前年を上回った。 最多は、サービス業他の55件(前年比129.1%増、前年24件)。このうち、飲食業(5→16件)、生活関連サービス業,娯楽業(1→12件)などで前年を上回った。 次いで、2024年問題が間近に迫る運輸業が38件(同533.3%増、前年6件)、コロナ禍前から慢性的な人手不足に陥っていた建設業が29件(同107.1%増、同14件)で続く。労働集約型の産業を中心に、人手不足が深刻になっている。 このほか、製造業が14件(同75.0%増)で2年連続、卸売業5件(同25.0%増)と小売業9件(同200.0%増)、情報通信業7件(同600.0%増)が4年ぶりに、それぞれ前年を上回った。 また、不動産業は前年と同件数の1件だった。 農・林・漁・鉱業は2年ぶり、金融・保険業は3年連続で、それぞれ発生がなかった。 業種別では、最多が一般貨物自動車運送業の30件(前年比500.0%増、前年5件)と、唯一、2ケタと突出。このほか、訪問介護事業が7件(前年1件)、土木工事業(同4件)、受託開発ソフトウェア業(同1件)、酒場,ビヤホール(同ゼロ)が各5件、建築リフォーム工事業(同ゼロ)、とび工事業(同ゼロ)、配達飲食サービス業(同1件)、エステティック業(同ゼロ)が各4件。また、内装工事業(同1件)、各種食料品小売業(同ゼロ)、ラーメン店(同ゼロ)、普通洗濯業(同ゼロ)、労働者派遣業(同ゼロ)が各3件などで、それぞれ前年を上回った。
【形態別】9割超が消滅型の破産
形態別は、最多が「破産」の151件(前年比147.5%増)で、2年連続で前年を上回った。構成比は95.5%(前年98.3%)で、「人手不足」関連倒産の大半を占めた。 一方、再建型の「民事再生法」は前年と同件数の1件だった。このほか、特別清算が2件で2年ぶり、取引停止処分が4件で3年ぶりに、それぞれ発生した。 業績が厳しい企業ほど、人手不足に直面しやすい。人材確保への投資対応が乏しく、人的なリソースの確保も難しい問題を抱え、先行き見通しが立たない企業が破産を選択するケースが多い。
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