<独占>ロッテ安田尚憲に覚醒予感「清宮、村上には負けない」
刺激もある。履正社時代のライバル校、大阪桐蔭の後輩であり、U-18の侍ジャパンでチームメイトでもあった話題のドラフト1位、藤原恭大の入団だ。沖縄・石垣キャンプで2人は常に同じ組に入れられていた。 「同じ大阪で何回も対戦していて、ジャパンでも一緒だったので、どんな奴か知っています。僕も昨年のこの時期は、てんやわんやしながらいろんなことに追われて余裕がなかった。しんどいところ、わからないところがあれば、何でも教えてあげたいが、あいつは意外としっかりとやっています。今んとこ何も聞いてこないですね(笑)」 どちらかと言えば、ライバルというよりメディアに追いかけられ1年目で戸惑う藤原を温かく見守る先輩の立ち位置。彼の人柄の良さがにじむ。それよりも「気になる」のは、2年前のドラフト1位同期で“高校ビッグ3”と呼ばれた日ハムの清宮幸太郎、ヤクルトの村上宗隆の2人だ。 「彼らの凄さはわかっています。でも負けてはいられない。成績は僕が一番下。負けたことが悔しかった。だからオフに練習をしてきた。2人を意識しながら切磋琢磨したい」 1年目の成績は、安田が17試合、打率.151、1本塁打、7打点で、清宮は53試合、打率.200、7本、18打点、村上は6試合、打率.083、1本、2打点だった。1軍成績は村上より上回っているが、イースタンの成績は、打率.288、17本、70打点の村上に対して、安田は、打率.271、12本、67打点。だから「僕が一番下」という自己採点。 しかも、3月9、10日にメキシコと強化試合を行う若手主体の侍ジャパンには清宮と村上の2人だけが選ばれた。誰一人レギュラーを獲得したものはいないが、安田は、2年目を勝負の年と捉え、レギュラーをつかみ2人のライバルを追い抜きたいと考えている。 「そんな簡単にレギュラーはとれない。プロ野球は甘くない。やれることを一個、一個出して、試合で続けることしかないんです」 プロで1年を過ごして心に決めたことがある。 「自分で決めたことを簡単に曲げない」ということ。 オレ流、いい意味での頑固さだ。 右も左もわからない1年目はコロコロとバッティングを変えていた。結果ファームからの脱却ができなかった。スカウトが「プロで成功しない選手」として挙げる代表的パターン。必要なものと不必要なものの取捨選択ができないまま流されユニホームを脱いでいく逸材が少なくない。 「自分で納得して変えていかなくては効果が出ないと思ったんです」 それに1年で気づいたのは安田の素質なのかもしれない。 今年の目標は「100試合、2桁本塁打、新人王」と公言している。井口監督の配慮で「前年までの1軍での打席数が60打席以内」という新人王資格が残った。 来年は東京五輪。2年後にはプロでなく大学を進路に選んだ同期生がプロに入ってくる。 「もう僕の人生で自国開催の五輪はないと思うんです。だから侍ジャパンは目指したいし出たいですね。巨人の岡本さんのように4番を1年通して打ちたいし、優勝にも貢献したい。3割、30本、100打点。そういう選手になりたいですね」 高卒でプロに入った巨人の岡本和真(22)は、昨季プロ4年目で4番に座り、史上最年少で3割30本100打点を達成した。安田が目指すのもそのサクセスストーリーだ。 今そのストーリーの進展度は? 「理想という完成から、まだまだ、10パーセントにもいかない。でも、日々、成長できている。悪くなってはいないですよ」 安田は覚醒の予感をさせて、とびきり明るく笑った。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)