球界大御所が阪神に意見「岡田、掛布でなく矢野新監督抜擢は正しかったのか」
矢野新監督も広岡氏が指摘する“1、2軍の野球の違い”は理解している。 「2軍では選手の可能性を伸ばすことを一番に考えた。盗塁でアウトになろうが、何かがそこで見えてきてくれたらいい、何か失敗から学んでくれたらいいと、チャレンジできた。そのスタンスは1軍でも変わらない。ただ、1軍でどこまでできるのか。すごく難しさを感じてくると思う」 今回の金本監督の辞任、矢野新監督就任に至る過程では、本社主導の“裏工作”が反感を買った。金本監督は、地位に執着することなく、責任はスパっと自分で取る性格。それだけに続投を前提にコーチ人事を先に発令した後の監督交代には違和感を覚える。だが、広岡氏は、チーム再建に重要なのは、本社、球団フロントの考え方だという。 「球団は、矢野監督と共にコーチも育てていかなくてはならない。監督以上に重要なのはコーチなのだ。新組閣には若いOBが集まったようだが、彼らに勉強しようという姿勢があるのか、球団にそういう場を作っていこうという考えがあるのか。そこが大事になってくる。新体制に課せられた命題だろう。ここをないがしろにすれば、また失敗するだろう」 監督、コーチがチームを作り、チームを強くするーというのが広岡氏の持論だ。 「広島を見てみなさい。西武を見てみなさい。ドラフトで取った生え抜きの選手を勉強しているコーチが根気強く、熱意をもって教えてきた積み重ねが結果となって出ている。阪神が見習う姿だ」 来季は、ベテランの福留孝介(41)、糸井嘉男(37)、鳥谷敬(37)らの起用法が難しくなる。エースのメッセンジャーが、日本人扱いとなるのはプラス材料だが、外国人の大砲に、もう1枚、先発に新外国人が必要。もし補強に失敗すれば、最下位からの脱出は厳しい。今こそ、本社、球団、矢野新監督が一体となって再建に取り組まねば、タイガースは、今後、しばらくは立ち行かなくなるという危険性がある。 それでも矢野新監督はポジティブだった。 「広島とは攻撃力に大きな差がある。だが、2軍で広島と試合をしてきて可能性では広島に負けていないと思う。今年は、歯車がうまくいかなくて勝てない年になったが、チームとして後退しているとは思わない。チーム内の競争は激しくなってきている。だから、そのみんなが力を出したら、優勝は可能だと思っている。そこが俺の一番の仕事」 矢野阪神は23日の秋季練習から始動することになる。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)