じつはヤバい「米中に後れを取る日本の法整備」の現状…有名人の写真を無断使用した「フェイスブック上の詐欺広告」が放置されたワケ
インターネット上の情報がサーバに格納されていることはご存じだろう。アダルトサイトを訴追したくても、サーバが海外にあるために手を出せない、あるいはフェイスブックで有名人の写真を無断で使った投資詐欺が相次いだ件でも、警察の動きが鈍かったのはフェイスブックのサーバが海外にあり、日本に捜査権がないためだった。犯罪を起こした国にその証拠となるデータがなく、別の国のサーバに保存されるとこうした無法が起きる。 【マンガ】バイデンよ、ただで済むと思うな…プーチン「最後の逆襲」が始まった これを防ぐために、商取引を行う国にサーバを置く、あるいはその国の法律に従ってデータを開示するというのがデータローカリゼーションの考え方だ。
アメリカではクラウド法を施行
データローカリゼーションは、電子商取引、金融取引、税金関連の情報や個人情報、オンラインギャンブルなどのグレーゾーンの犯罪まで、オンラインで行われるすべての商取引とデータに関係する。 そのため、国家がデータを規制することが正しいのか、自由主義経済に反するのではないか、いや国家として管理し、犯罪から国民を守り、税金を正しく徴収することと自由主義は別だといった議論はある。しかしすでにアメリカや中国では規制の方向で法律を制定している。 まずアメリカから見ていこう。2018年3月、アメリカで「The Clarifying Lawful Overseas Use of Data Act」、通称CLOUD法が成立した。CLOUD法のCLOUDはClarifying Lawful Overseas Use of Dataの頭文字で、企業のデータ開示についての法律。インターネットのクラウドとは関係がないのでご注意を。 クラウド法のポイントは2つあり、1つはサーバが国内にあろうがなかろうが、政府や警察はデータの開示要求ができるというもの。これには裁判所の令状も必要がないそうだ。 政府に秘密にしておきたい取引やデータを海外のサーバにいれておいても、アメリカとの取引をする場合には、政府の要求に応じていつでも開示する義務が発生する。 クラウド法の成立には、2013年に起きたマイクロソフト社とアメリカ司法との係争があるという。麻薬捜査の一環でアメリカの警察がマイクロソフト社にメールの開示を要求したところ、マイクロソフト社はサーバがアイルランドにあるとして開示を拒否、法廷で争うことになった。裁判は最高裁までもつれこんだが、その間にクラウド法が成立、マイクロソフト社はサーバの情報を開示する義務を負った。 さらにもう一点、海外の政府が自国で起きた犯罪の立件にアメリカ国内のサーバの証拠が必要となった場合、いくつかの民主的な条件を満たせていれば、開示要求ができるとしたもの。フェイスブックは当初日本政府の要求に従わず、データを出さなかったが、そうしたことはできなくなる。 自国政府のみならず他国の政府もデータの開示要求ができることは、データ移動の障壁を減らし、自由度を増すというのがアメリカの考えだという。サーバがどこにあるかで犯罪が見逃されるというのは、自由な社会とは言えない。 ※データローカリゼーション アメリカのIT業界団体が図式化した現在のデータ障壁のある国とその内容。データ障壁がないということはセキュリティがガバガバという意味でもある