「NISAとiDeCoはどっちがお得ですか?」 専門家が解く“話題の資産形成”の疑問
iDeCoの最大のメリットは60歳まで引き出せないこと
iDeCoで運用しているお金は60歳まで引き出すことができません。それをデメリットだと言う人もいますが、それは違います。むしろ60歳まで引き出せないのはiDeCoの最大のメリットです。なぜなら、人生においてはさまざまな出費があるものの、老後資金だけは誰にとっても必ず必要となるからです。 一般的に人は、目の前にお金があるとどうしても使ってしまいがちです。いつでも引き出せるのであれば、老後資金のためと考えていても、いつの間にか引き出してしまうということがあり得ます。iDeCoのように60歳までは引き出せないという仕組みになっているからこそ、自然に老後の資産形成ができると考えるべきです。 また、iDeCoの税制優遇は運用益非課税ということもありますが、それ以上に大きいのが、掛金が全額所得控除になることです。したがって、仮に所得税の税率が10%、住民税の税率が10%だとすると、合計した掛金の20%が年末調整とか確定申告で戻ってきます。これは非常に大きなメリットです。 iDeCoは必ずしも投資のための制度というだけではありません。投資がよくわからないとか不安だというのであれば、iDeCoを使って定期預金で運用してもいいのです。 現在では定期預金の金利はほぼゼロに近いものの、所得控除で掛金の20%が戻ってくるのであれば、年利20%で貯蓄しているのと同じことになります。これも制度が年金だからこその優遇策で、この所得控除はNISAにはありません。
2024年、NISAはかなり使いやすくなる
一方、NISAは2014年にできた制度ですが、2024年から制度の内容が大幅に拡充されます。詳しく書いていくと、それだけで本1冊ぐらいになってしまうので、ここでは重要なポイントだけ述べておきたいと思います。 まず一番大きな制度拡充は、制度が「恒久化」されたことです。今までは口座開設期間と非課税で運用できる期間が定められていましたが、新しいNISAではこれが無期限になります。つまり、いつからでも、そして、いつまでも、非課税のままで投資を続けることができるということです。これはとても画期的なことです。 さらに利用できる金額も大きく拡大されます。従来は最大でも年間120万円であったものが、2024年からは年間投資枠が360万円と3倍に増えます。これもかなりの大盤振る舞いと言っていいでしょう。 ただし、期限は無期限と言っても「生涯投資枠」というものが決められ、新しいNISA制度を使って投資できる上限の金額は1800万円となります。 とはいえ、利便性も格段に向上します。従来は、非課税期間の間に売却すると、その枠はもう使えなくなりました。ところが今回の制度拡充においては、売却すると、その分は翌年に復活し、年間利用限度額の範囲内であれば再度使えることになります。 先ほど「詳しく書いていくと、それだけで本1冊ぐらいになってしまう」と言いましたが、NISAを理解するのに最適な本をご紹介しましょう。現時点で新しいNISAについて最も詳しく、よくまとめられているのは次の本です。参考にしていただけたらと思います。 『大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術』竹川美奈子・著(日本経済新聞出版)