三井不動産・三菱地所・住友不動産の戦い方、不動産業界の未来はどうなる?
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2025」の「親子で選ぶ『自分に合った』業界&働き方 企業選び編」を転載したものです。 商業施設やオフィス、住宅などの開発を手掛ける不動産業界はダイナミックな仕事内容や高待遇から就活生に人気の業界だ。近年はコロナ禍を経て、ビジネスモデルの転換期を迎えている。(ダイヤモンド・ライフ編集部) 近年の大手、中小不動産会社の主な開発動向を見る ● デジタル化と環境配慮のムーブで 従来型の運用や戦略から転換する 新型コロナウイルスの影響で働き方や生活スタイルが見直され、リモートワークなどさまざまな変化に対応しやすいオフィスや住宅のニーズが高まった。これにより、不動産業界は、売買、賃貸のリスク管理といった利益を最大化するための「運用と戦略」、および開発物件の差別化を再考している。 大手不動産会社では、デジタル技術を駆使して新たなサービスモデルを構築する動きが活発だ。 ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏は「不動産価値の提供の仕方が変わった。立地や設備管理だけでなく運営力やブランド力が重視されるようになってきた」と語る。 例えば、オフィスの入居者に対し、入退館、施設予約などの機能を搭載した便利なアプリを駆使して顧客満足度を向上させる。また、IoT技術を活用したスマートホームで住宅の利便性を高めるといった事例が増えているのだ。 一方、不動産開発についても差別化が顕著になっている。
大和証券の増宮守氏によれば「三井不動産は商業施設や大規模再開発案件に強みがある。三菱地所は丸の内再開発を中心に事業を展開し、住友不動産は不動産を売らずに長期保有するといった各社特徴的な事業ポートフォリオと戦略がある」という。 海外の開発事業では、急速な都市化が進むアジアの新興国でのプロジェクトが増えている。最近では、三井不動産は台湾、三菱地所はタイ、住友不動産はインドなどで不動産開発を推進している。 ● 都心オフィスの需要が変化 住宅は新しい顧客層を開拓 不動産会社の開発分野はオフィスビルや住宅、商業施設、物流施設など多岐にわたる。 ここで、企業規模ごとの戦略の違いと主な分野ごとに市場動向を確認しておこう(下表参照)。 都心部のオフィス需要はリモートワークの普及に伴い変化している。特に、人員の増減に対応したり配置を変えやすいフレキシブルなオフィスやコワーキングスペースの需要が高まっている。 住宅市場も変化が著しい。都心部の分譲マンション需要は高止まりする一方で、郊外の戸建て住宅は需要が落ち着いてきた。特に、金利上昇が住宅ローンの負担を増やす可能性があり、消費者の購入意欲に影響を及ぼしている。 そのため大手ハウスメーカーの一部は、こだわりの設計で高額になりやすい注文住宅から、標準搭載としてエコを意識して設計した建売住宅へと事業のシフトを図り、新しい顧客層の獲得を目指す。 商業施設は回復基調が見られる一方、大手はデジタル技術の活用、中小はアート、カルチャーをテーマにした店舗運営などに成長の活路を見いだしている。 不動産業界で活躍するには、顧客の多様なニーズを的確に捉えるコミュニケーションやヒアリング力、提案力が必要不可欠だ。入社後は、担当分野に応じた法規制や契約書に関する知識など、専門的なスキルを磨くことも求められる。
ダイヤモンド・ライフ編集部