和歌山でクビアカツヤカミキリの被害拡大 対策急ぐ 桃や梅、桜などを加害
ネット設置、研修会開く
和歌山県では2023年、桃や梅、桜などを加害するクビアカツヤカミキリの被害が初めて県中部に広がった。梅の産地である同地域での一層の拡大を食い止めようと、県やJA紀州などは対策に力を入れている。 【画像】クビアカツヤカミキリの成虫 同県で初めてクビアカツヤカミキリを確認したのは17年。それ以降、県北部で発生が拡大していたが、23年には県中部でも被害を確認した。御坊市、日高川町、由良町の16園地で44本に被害が出ている(23年10月時点)。同県は、全国の生産量の7割を産出する梅産地。特に、みなべ町や田辺市など県中部で生産が盛んで、警戒感が高まっている。 新たに被害が広がった3市町を管内に持つJA紀州の廣澤健仁営農指導員は、剪定(せんてい)講習会などで対策を呼びかける他、産卵や羽化した成虫の他の木への拡散を防ぐ木へのネット巻きの方法を独自に研究する。ネット巻きは対策の基本となるが、より簡単に巻ける方法を検討している。 ネットの設置には1本当たり2人で5~10分かかる。管内の梅園地は1戸当たり平均で2ヘクタールほどで、木の本数は400~600本になる。設置には33~100時間かかる計算で、廣澤営農指導員によると「全ての木に巻くのは難しい」のが現状だ。 県も周知に力を入れる。11月にみなべ町で対策研修会を開き、県北部で比較的抑え込みに成功している紀の川市と岩出市の対策を紹介。発生を確認した園から半径1キロ以内にある全園地で調査することや、農薬の散布徹底などの対策が奏功していると説明した。
放棄園伐採に十分な支援を
発生拡大の抑止には、放棄園の予防的な伐採を対象とした支援策が必要との声も上がる。1・8ヘクタールで梅を栽培し、みなべ町議会議員も務める真造賢二さんは、ウメ輪紋ウイルスの感染拡大防止のため、放棄園などの伐採に多面的機能支払交付金を活用した経験を振り返る。 15~18年に20人ほどが活用し、計3ヘクタールを伐採。10アール当たり3万円の日当を同交付金から支払った。現在、被害は沈静化しているという。同ウイルスの拡大防止と同じように、「クビアカツヤカミキリの予防目的でも同交付金活用の検討を呼びかけたい」(真造さん)とする。 一方で、同交付金だけでは限界がある。同交付金を活用したのは、町内でも真造さんが当時、地区の取りまとめ役を引き受けていた東本庄地区だけ。全域で広がっていくには、予防的な伐採を明確に目的に据えた補助金が必要だと考え、国や県の支援も必要とする。(浦木望帆)
<ことば> クビアカツヤカミキリ
体長2~4センチのカミキリムシ科の昆虫。成虫はつやのある黒色で首が赤い。桃や梅、桜などバラ科の木を好み、樹皮の割れ目などに卵を産み付ける。幼虫が木の内部を食い荒らして木を弱らせ、枯らすこともある。2012年の国内初確認から、現在までに13都府県に拡大している。
日本農業新聞