「ユウキは大きく成長した」名将ブランが語る男子バレー日本代表の未来…石川祐希をキャプテンに指名「私の仕事はユウキにスペースを作ることでした」
2017年に来日して以来、日本の男子バレーを世界ランキング2位まで引き上げた名将フィリップ・ブランの目には、石川祐希、高橋藍という存在がどう映っていたのか。その才能をどのように生かし、高みへと導いてきたのか。パリ五輪での退任後、新天地として渡った韓国から、愛弟子ふたりに感謝とエールの言葉を送る。 発売中のNumber1106号に掲載の[恩師からのメッセージ]フィリップ・ブラン「ふたりはまだまだ成長できる」より、内容を一部抜粋してお届けします。 【貴重写真】「めちゃ若い…」7年前、来日したブランの話を聞くマジメな石川祐希…「涙が止まらない高橋藍」「ブランの前で子供のように泣く西田」「静かに目を潤ませる宮浦」「健太郎は藤井さんと一緒に…」テレビでは映らなかった男子バレー“涙の円陣”を見る(100枚超) ――監督、お久しぶりです。すでに韓国で仕事を始められているのですね。 「オリンピックが終わってから5日だけ休み、今度はソウルにやってきました」 ――ほとんど休んでないじゃないですか。 「やらなければならないことが山積みです。組織をオーガナイズし、問題点を指摘し、改善しなければなりません。しかも、新しいシーズンは目の前に迫っていましたからね」 ――ところで、韓国の食事はいかがですか。 「とにかく辛い! 辛すぎます。でも、焼き肉は美味しいですよ」
祐希は技術もリーダーシップも大きく成長した
――さて、パリでの夏の経験を話していただかなければなりません。準々決勝のイタリア戦、なんとも悔やまれます。 「とても悲しい体験になりました。私はひとつの大会が終わると、すべての試合を見直し、長所と短所を洗い出すのです。今回、私は初めて日本の試合を振り返る作業をしなかった」 ――それは、なぜですか。 「韓国リーグの試合を見なければならなかったという事情はあるにせよ、どうしたことか、そういう気持ちになれなかったのです。ただし、イタリアと互角の試合を展開できたことは誇るべきことですし、準々決勝ではありましたが、オリンピックのバレーボール競技のなかでも、ベストマッチのひとつだったと感じています。ただし……」 ――なんです? 「私のコーチングキャリアで、総得点で上回っているのに敗れた試合は初めてだったのですよ」 ――なんという……。それでも、選手たちは最高の働きを見せたと思います。特に石川祐希はオールアウトしたんじゃないでしょうか。彼はあなたが指導者になってからの7年間で、驚異的な成長を見せました。 「その通りです。祐希は今季からセリエAの名門、ペルージャでプレーしています。このクラブでプレーすることは大きな名誉であり、祐希はそれにふさわしい実力を身につけたということです。その土台となったのは肉体です。7年前の時点で、彼はトップレベルでプレーする準備は出来ていましたが、ケガに悩まされていました。そこで村島(陽介)トレーナーと一緒に世界最高峰で戦える体へと変えていったのです。そのうえで、彼には戦略的技術を向上させる必要がありました」 ――具体的にはどんな技術ですか。 「中央大学時代から、祐希はパワフルなスパイクと得点を取れるサーブを持っていましたが、大学と世界とではレベルが違います。特にスパイカーとして相手のブロックをどうマネージメントするか。そして相手がショートサーブやパワフルなサーブで祐希を狙い、揺さぶってきた時に、どうやってパスをして、すぐにスパイクを打つ体勢に持ち込むのか。その戦略的技術を祐希は見事に発展させたのです。特にパスの精度は年々向上していきましたね。さらにはリーダーシップの面で、彼は大いに成長しました」 ――石川をキャプテンに指名したのは監督でした。 「日本型組織の問題点として、どうしても年長者が幅を利かせてしまうことが挙げられます。私の仕事は祐希に『スペース』を作ることでした」
(「NumberPREMIER Ex」生島淳 = 文)
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