【拉致問題】被害者家族が4年ぶりの訪米で訴えた「切迫感」…アメリカは全面支援を約束も なお見えぬ打開の糸口
こうした中、4月末の米韓首脳会談では拡大抑止の強化を再確認。バイデン大統領は、北朝鮮が核攻撃を行えば「どのような体制であっても終わりを迎えることになる」と強く警告した。日米韓3か国も安全保障面での連携を深めるなど圧力強化に舵を切っており、対話の機運は見えない。 さらに、バイデン政権が今年1月に、6年間空席だった北朝鮮人権問題担当特使のポストに国務省高官を指名したことも、人権問題でも圧力を強めるサインと受け止められている。あるバイデン政権の元高官は「あのポストを指名したということは、逆にバイデン政権が対話による問題の解決を半ば諦めた証拠という見方もできる」とまで踏みこんだ。
■「日本政府の力量が試される」事態の打開へ模索続く
また、家族会が新たな運動方針で容認した「人道支援」についても、北朝鮮との交渉を動かすツールになるかは見通せない。ワシントンでの会見では、記者団から「アメリカも人道支援を交渉の糸口にしたいと考えている中、先に人道支援を提案されたら、日本の支援の効果がなくなってしまうのではないか」との質問が飛んだ。 横田拓也さんは、「順番が後になるか前になるかで、日本がやれる人道支援の効果が薄れたり、強まったりするということはあると思う」と認めつつも、だからこそ日本政府の交渉力が問われる、と岸田政権の努力をうながした。 「それをふまえて、日本政府が北朝鮮との水面下の外交交渉を進め、お互いの国が、日朝両国が明るい未来を得られるという信頼感を醸成しながら問題を解決する。そういう外交交渉をするのが日本政府の責任だし、力量が試されていると私は思う」(家族会代表・横田拓也さん) 拉致問題解決に向けて、家族に残された時間は決して長くはない。日本政府には、アメリカという大国を巻き込み、まずは北朝鮮を交渉の席に着かせるためのしたたかな外交が求められる。