<近江式エンジョイベースボール>24センバツ/4止 打撃向上へ創意工夫 「甲子園の土踏む」争い熱く /滋賀
昨秋の近畿大会で8強に進出した近江。この大会ではエースの西山恒誠(2年)が2試合を投げきり、失点1と躍動する一方、チームは十分な援護をできない結果に終わった。「西山任せのチームにはなりたくない」。冬の練習が始まると、選手たちは全体の力を底上げしようと練習への姿勢も変わっていった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち チームに長打を打てるようなバッターはいない。少しでも打撃力を上げようとフリーバッティングやロングティーなどに力を入れる選手が増えていった。 惜敗した近畿大会準々決勝の京都国際(京都)戦でチャンスに打てなかった森島佑斗(2年)は、岡本一倖(同)と毎日の全体練習が終わった後も室内練習場で自主練習に励んだ。「試合で本塁打を打ち、チームに貢献したい」。敗戦の悔しさを打つボールにぶつけた。森島のいとこの森島海良(同)も「今までと同じことをしていては成長できない」と自宅での素振りを日課にした。 昨年11月、長打を打てる選手を増やそうと2年生は新たな練習メニューを検討する話し合いを重ねた。「筋力を付けるために朝、授業が始まる前の時間にトレーニング場を開放してもらおう」。まとまった意見を武田弘和部長に伝え、週数回、午前7時45分からの約30分間トレーニング場が使えるようなった。器具を使ったウエートトレーニングで選手たちの体はたくましさを増していく。選手たちは創意工夫して努力を重ねる「エンジョイベースボール」の精神で自らを高めながら、センバツ出場校を決める選考委の日を待った。そして1月26日、近江は2年ぶり7回目のセンバツへの切符を手にした。吉報を待ちに待った選手たちはグラウンドで喜びを分かち合った。 しかし、喜ぶのはその日だけだ。翌日からは近江伝統の弁天ダッシュや三角ダッシュ、バッティング練習により力を注ぐ選手たちの姿があった。「甲子園の土をどうしても踏みたい」。一人一人にその気持ちが熱く湧き起こり、激しいレギュラー争いを勝ち抜くため、日々努力を重ねていった。 迎えた2月23日のセンバツメンバー発表。多賀章仁監督は「自分の立場をしっかり意識するように。生活習慣も改善してほしい」と選手らに約1カ月後に始まる甲子園での戦いに向けて説いた後、メンバー20人の名前を読み上げた。再び甲子園のベンチに入る選手、初めてチャンスをつかんだ選手もいれば、アルプススタンドから応援することになる選手もいる。それぞれがさまざまな思いを胸に発表を聞いた。 多賀監督は「多くの人に勇気を与え、チームの勝利のために相手をリスペクトし、心に残る試合をしてほしい」と夢舞台での近江の躍進を願う。チームが一つとなり、支えてくれた人たちのために、そして滋賀県のために「エンジョイベースボール」を体現できるか。選手の自分自身との戦いはこれからも続いていく。【菊池真由】=おわり