日本は生物多様性が危うい場所? 私たちにできることは【5月22日は国際生物多様性の日】
Q3. コロナも無関係じゃない⁉ 生物多様性が失われてきたために起きてきたこととは?
新型コロナウイルス感染症は、動物由来感染症の一つと考えられている。動物由来感染症とは、動物がもともと保有していた病原体が人に感染する病気のこと。この動物由来感染症が、生物多様性が失われることで、私たち人間にたくさん広がるようになってきたとしたら……? そのメカニズムは、シンプルにいうと、「未知との遭遇」だ。もちろんSF映画のように、どこかから宇宙人がやってくるわけではない。実は、まだ人間によって見つかっていないだけで、すでにいるのだ。宇宙人ではなく、病原体が。 地球上には、これまで人間が接してこなかった病原体がたくさんいると考えられている。そうした病原体は、森林の奥深くにいたり、普段人間が接しない動物に感染していたりする。ところが、人間の活動によって、森林が破壊されたり、野生動物との出会いが増えたりすると、その未知の病原体と人間が出会う機会が生まれる。こうして、新しい病気にかかってしまう。そこに最近のグローバル化が一役買い、 未知の病原体が世界へと広がっていく、というわけだ。 このようなネガティブな影響は、感染症だけではない。実は、災害にもおよんでいる。自然は、おいしい食べ物や空気をあたえてくれるだけではない。木々が健やかに根を張ることは、土壌が雨水を吸収することや、土砂災害を防ぐこと、洪水になるのを遅くすることに貢献している。ところが、いまは毎年のように洪水や土砂災害が起きている(内閣府)。頻発する大雨自体は気候変動による影響もあるが、それがさらなる災害を引き起こす要因の一つには、たとえば、人間が使う場所を広げるなどの理由で、山を切りひらき、土地をコンクリートで覆ったり、山肌を削ったり、森林を伐採したりといった生物多様性の損失がある。 自然の豊かさによって育まれた健康な木々や土壌などによりおさえられていた災害のリスクが、高くなってしまっているのだ。
Q4. 日本にしかいないたくさんの動物たち。日本の生物多様性は、大丈夫?
実は日本、なかでも南西諸島は、生物多様性が特に豊かでありつつ、同時に危機にさらされている場所「ホットスポット」として認識されている。「まさか日本が⁉」と思う人もいるかもしれない。南西諸島は、日本にしか生息しない動物の宝庫。日本全体の陸生脊椎動物(りくせいせきついどうぶつ)約1,300種のうち約6割が南西諸島に生息している(WWFジャパン, 2021)。ところが、世界自然遺産に登録された4島だけでも、環境省が絶滅のおそれがあるとみている動物は、540種以上(WWFジャパン, 2021)! また、日頃私たちが生活する地域にも、絶滅が危惧されている生き物がたくさんいる場所がある。河川や湖、湿地、水田やその周辺の水路などを含む「水辺」だ。これらの水辺は、淡水魚や水生昆虫、水生植物にとっての生活の場であり、かつては生物多様性の宝庫だった。しかし、河川や水田水路における生態系に配慮のない改修や、侵略性の高い外来生物の侵入などによって、水辺の生き物の多くはいま、絶滅の危機にある。一昔前は当たり前に見られたメダカやゲンゴロウが、絶滅危惧種になってしまったことを聞いたことがある人もいるかもしれない。 世界には、このように絶滅の危機に直面している動物が4万種以上もあるとか(WWFジャパン, 2023)。そのなかには、小さな草木を踏みつぶし、大きな木々が育ちやすい環境を作ってくれるマルミミゾウ(大きな木々が育てば、CO2を吸収して温暖化防止にも貢献!)や、動物の死肉を食べ、それを植物の生育に必要な物質に変えてくれるミミヒダハゲワシも含まれている。 私たちの生活には関係ないと思う生き物であっても、こうして地球が豊かな場所であり続けるための役割を担っていて、お互いにつながっている。そんな動物たちが大量に地球上からいなくなったら、一体どうなってしまうのだろうか? 想像もつかない。