美技に阻まれた西武・松原聖弥の「サヨナラデビュー」…思い出す「90年開幕戦の大森剛」
「惜しい」としか言いようがない一打でした。 6月26日、県営大宮公園野球場で行われた西武・日本ハム戦のヒトコマです。 【動画】松原聖弥がソフトバンク戦で貴重なタイムリーを放ったシーン 松原聖弥は前日に、若林楽人とのトレードで巨人から西武に入団したばかり。この日は昇格すると、さっそく「1番・ライト」でスタメン出場。2-2で迎えた延長12回裏、二死一、二塁の大チャンス。レフト後方に大きな飛球を放ちます。 「サヨナラだ!」とレオ党の誰もが確信したその瞬間、日本ハムの五十幡亮汰が俊足を飛ばし、背走しながら最後は捕球。「ザ・キャッチ」で劇打デビューは阻まれてしまったのです。 スポーツ紙のデスクは言います。 「貧打の中で何とか打線を強化したい西武が、白羽の矢を立てたのが2021年には135試合に出場し、打率.274、12本塁打をマークした『天才』松原でした。新加入の選手にとって最初は肝心。本人も『イケるぞ!』と思うし、新天地の首脳陣やチームメートも『ヨシッ!』となる。そういう意味でも、松原にとってはアンラッキーな打球でしたね」 そして、「美技に阻まれた」デビューを見ながら、「1990年のセ・リーグ開幕戦における巨人のドラフト1位ルーキー・大森剛」を思い出したと言うのです。 「舞台は東京ドームでのヤクルト戦でした。9回裏、3-3の同点で巨人は一打サヨナラのチャンスを迎えます。ここでベンチは代打に慶応義塾大からドラフト1位で入団した大森さんを起用したんです。大森さんは左中間に強烈な打球を飛ばすんですが、それを栗山さんがダイビングキャッチで捕球。大森さんはヒーローになり損ないました」 もし歴史に「IF」があるとするなら…。 「開幕戦のお立ち台に大森さんが上がり、東京ドームの巨人ファンに歓喜をもって迎えられたら、大森さんの現役生活はどうなっていただろうかと、今でも我々報道陣の間では話題になるんです」 「大森さんは最終的に選手として大成することはありませんでしたが、スカウトとしては光星学院の坂本勇人を見いだし、2006年の高校生ドラフトでの外れ1巡目指名を進言するという『ファインプレー』を見せました。もしあの時、栗山さんが捕れなかったら、『巨人・坂本勇人』も誕生していなかった可能性も高いです」 松原は6月30日の楽天戦(楽天モバイル)で2回二死満塁のチャンス、中前にタイムリーを放ち、移籍後初タイムリー、初打点を記録しました。さらに7月4日のソフトバンク戦(みずほPayPay)でもタイムリーを放っています。西武首脳陣も彼の奮起に期待しているでしょう。 「もしあの打球が抜けていたら」。そんな「IF」を忘れてしまうほどの活躍を、松原には期待したいものです。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]