「お互いヘボ同士なんだから…」秋初戦敗退の“偏差値66公立校”が夏の甲子園1勝「大社さんもそうでした」“栄冠の舞台裏”を掛川西監督に聞く
大社旋風を見て「このやり方でいいんだ」
長年、高校野球に携わってきた人から見ると、監督と選手の距離が近すぎると感じるかもしれない。 だが掛川西は今夏、26年ぶりに夏の甲子園出場を決めた。目標のベスト8には届かなかったものの、白星もあげている。秋の大会で初戦敗退となったどん底から、約1年をかけて静岡県の頂点へ上り詰めたのだ。 そしてたどり着いた聖地・甲子園。大石監督は転換した指導方針が間違っていないと確信する出来事もあった。 それは掛川西と同じ県立高校で、今夏に甲子園で旋風を巻き起こした大社の練習を見た時だった。石飛文太監督がリラックスして選手と楽しそうに声を出していたという。 「もちろん勝ちたい気持ちはあると思いますが、監督さんからは選手と一緒に長く野球をやりたい思いが伝わってきました。選手を信じているのも分かりましたし、選手も監督に対して自然体でした。地元・島根の選手だけで甲子園に出場して、優勝候補の報徳学園に勝った大社高校を見て、『このやり方で良いんだ』と自信を持てました」
悪循環に陥る指導…食事もその象徴だった
今でこそ選手との距離感に悩まなくなった大石監督だが、監督に就いてから数年間は迷いと焦りでいっぱいだった。黄金期の静岡高校野球部で部長を経て、2018年に母校へ着任した当時を回想する。 「最初は調子に乗っていましたし、甘く考えていました。静岡高校で栗林先生(栗林俊輔監督)に教わったことをそのまま掛川西に取り入れれば、すぐに勝てると思っていました。ところが、全然勝てませんでした」 結果が出ないため、選手への当たりは強くなる。選手の言葉に耳を傾ける余裕はない。信頼関係を築けない悪循環に陥っていた。 その象徴の1つが食事だった。<つづく>
(「甲子園の風」間淳 = 文)
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