「勝負強い人」と「肝心なところで崩れる人」あまりに明確な性格の違い
かつて青森山田サッカー部を何度も日本一に導き、現在はJ1に昇格した町田ゼルビアを監督する黒田剛監督は、組織で成果を出すには物怖じせず、誰もが意見を交わせる環境を作ることが重要だという。個性がぶつかり合うチームをまとめてきた黒田監督が明かす、あの人気選手の肝っ玉エピソードとは?※本稿は、黒田剛『勝つ、ではなく、負けない。 結果を出せず、悩んでいるリーダーへ』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 後輩が先輩に遠慮なく言える 環境が互いの成長に繋がる 松木玖生には面白いエピソードがあります。 彼が中学校3年生の時でした。高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグ・イーストの最終戦、市立船橋高校との試合(第18節・2018年12月9日@船橋市法典公園球技場)に、当時中3だった彼をスタメン起用したんです。 チームは3-0で勝利。ただ、玖生は後半20分くらいで交代。彼はベンチに戻ってひたすら泣いていました。途中交代させられたことと、この日の自分のプレーがあまりに良くなかったことへの不甲斐なさからでした。 泣いている姿を見てあるコーチがこう言いました。 「中学生が高校生の大会に出させてもらっていて、泣いてる暇があったらもっと試合を見て勉強しろ!お前に他にできることないのか?何のためにここへ来たんだ!」 そうしたら、玖生はすぐにベンチの前に出ていき、 「もっと走れ!」「何やってんだ!」 と怒鳴り始めました。中学3年生の彼が高校3年生にはっぱをかけたのです(笑)。その姿をベンチで見ていた選手やスタッフはみんな大笑いしました。こういったエピソードもあるぐらい、肝っ玉の据わった男。しかも先輩や後輩にかかわらず愛されている。類稀なリーダーシップの持ち主なのです。
ちなみに、高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグとは日本の第2種(高校、U-18)年代において全国の高校サッカー部やJユースなど上位20チーム(当時)がプレミアリーグイーストとプレミアリーグウエストの東西2つのグループに分かれて、ホーム&アウェイでリーグ戦を約1年間繰り広げる大会。高校サッカーで「三冠」というのはインターハイ、高円宮杯、全国高校サッカー選手権を指します。 玖生は誰に対しても物申せるタイプではあるし、キャプテンシーやリーダーとしての感覚というのは、彼の中ではすでに育っていました。ただ、青森山田のサッカー部の環境、すなわち後輩が先輩に動じずにいろいろな意見や指摘を忖度なく言える環境を意図して作ったのが育成のポイントです。 自分が1年生だからといって、3年生の中に入って練習する時に萎縮するようでは、試合では到底活躍できません。学年や年齢に関係なく、しっかりと駄目なものには駄目と相手に伝える、それは後輩先輩関係なく、互いの成長に繋がります。 ● 先輩を呼び捨てにする大声が 飛び交う青森山田サッカー部 こういった環境を作るにはポイントがあります。