女子フィギュアGPシリーズで3連勝したロシア新星3人少女の衝撃と4回転時代幕開けの波紋
女子フィギュア界にロシアの2人の新星少女が大きな衝撃を与えている。開幕したGPシリーズの3戦を今季からシニア転向したロシアの15歳コンビ、16歳の3人が順に優勝したのだ。それも4回転、トリプルアクセルを操っての圧倒的V。先のフランス杯では、アリョーナ・コストルナヤ(16、ロシア)がSP、フリーでトリプルアクセルを計3本決めて母国のソチ五輪金メダリスト、アリーナ・ザギトワ(17)に20点弱の差をつけて優勝した。ロシアの新星3人少女が巻き起こした女子4回転時代の旋風は、3年後の北京五輪まで続くのか。日本勢は彼女ら3人に対抗できるのだろうか。
トルソワは4回転3本で世界最高得点
それはアメリカから始まった。先月18日からラスベガスで行われたスケートアメリカでSP4位発進となったアンナ・シェルバコワ(15、ロシア)がフリーで衝撃を与えた。冒頭に男子でも難解な4回転ルッツ+3回転トゥループの連続ジャンプを綺麗に決めてみせたのだ。続けざまにソロの4回転ルッツの着氷にも成功した。 フリーの得点は160.16点、それもコンビネーションジャンプに2つの回転不足判定があってのスコア。まだ伸びシロがあるのだから恐ろしい。計227.76点でSP2位だった坂本花織(19、シスメックス)、3位だった樋口新葉(18、明大)を一気に抜き去りシニアデビューを優勝で飾った。 「4回転ルッツなどジャンプをノーミスで跳ぶことを目標にしていました。まだまだ改善する点が多いですが、優勝できたことは重要なことです」 シェルバコワは淡々と英語でスピーチした 一方、脅威の4回転を目の当たりにした坂本は「こんなに4回転時代が早く来るとは思わなかった」と、正直なコメントを残していた。 続く25日からのスケートカナダでは、さらなる衝撃が走った。 日本のエース、紀平梨花(17、 関大KFSC)と4回転を武器にシニアデビューのアレクサンドラ・トルソワ(15、ロシア)の直接対決。SPではトリプルアクセルに成功した紀平が81.35点で首位発進。そのトリプルアクセルには2.86点と高いGOE加点があった。女子ではSPでの4回転が認められていないため、トルソワは秘密兵器を使えず74.40点で3位と出遅れた。だが、フリーで圧巻の4回転ラッシュを披露したのである。 冒頭の4回転サルコーは転倒したが、続く4回転ルッツを着氷に成功させ、4回転トゥループ+3回転トゥループの連続ジャンプも決めて見せた。さらに疲労が出るはずの後半に4回転トゥループ+シングルオイラー+3回転サルコーの3連続ジャンプまでやってのけ、なんと4回転を3本成功させたのだ。しかも、4回転ルッツは11.50点の基礎点に2.79点のGOE評価があり、4回転+3回転の連続トゥ―ループには13.70点に3.12点ものGOE。4回転トゥループからの3連続ジャンプが15.73点+1.76点で、この3つのジャンプだけで48.6点もの技術点を稼いだのである。 フリーの166.62点及び計241.02点は、いずれも自己ベストを更新しての世界最高得点。紀平も冒頭のトリプルアクセルがばらけたが、すぐにトリプルアクセル+2回転トゥループに修正して演技をまとめたが、フリー148.98点、計230.33点に留まり、観客の度肝を抜いたトルソワが見事に逆転優勝した。 紀平は9月に足首を捻挫した影響で練習してきた4回転サルコーをまだ投入することができずにいるが、よほどの刺激を受けたのか、試合後、「五輪まで時間がないので今シーズン中には4回転サルコーを完成させたいとの思いがある」と語っている。