古豪復活! 42年ぶり春季神奈川優勝の武相、背景にあった「徹底的な打力強化」と「9イニング勝負」
武相が42年ぶりの優勝で幕を閉じた神奈川県春季大会。”打倒エリート”を掲げ、決勝では東海大相模を相手に9得点を奪って頂点に立った。 【一覧】武相の春季神奈川大会成績
初戦で昨春準Vチームを撃破!快進撃はここから始まった!
振り返ってみれば、初戦の相手は昨春準優勝の相洋だった。試合は両チームともに投手陣が粘りを見せ、スコアボードに0を並べた。最後は延長11回のタイブレークに3点を挙げると、そのリードを守り切って3対2で撃破。初戦からハードな試合を制すと、続く3回戦で立花学園を8対2、4回戦では昨夏ベスト4の横浜商に5対3で逆転勝利を収めるなど、実力校を倒して勝ち上がっていった。 夏のシード権をかけた準々決勝では、粘る日大藤沢を振り切って6対5で勝利。豊田 圭史監督は、「数年前は、この春季大会で戦ってきたチームに10点、20点の差をつけられることが当たり前だった。選手たちはよくついてきてくれた」と万感の思いを口にしていた。40年ぶりとなる準決勝進出は、豊田監督の生まれた1984年以来。直近2年でも初戦敗退と苦しみ、「ベスト8の壁を越えよう」と臨んできた中での勝利だった。 ベスト8進出で勢いに乗ったチームは、準決勝の向上、決勝の東海大相模でも臆することはなかった。決勝戦では、今大会初登板となった三上 煌貴投手(2年)が9回完投。決勝当日の朝に先発を告げられ、「ついに来た」と待ちわびた機会に目をぎらつかせていた。同学年の八木 隼俊投手(2年)が4回戦、準々決勝で完封勝利を挙げ、「同学年としてライバル視していました」と、仲間の活躍を刺激に141球の熱投で42年ぶりの頂点に導いた。
「派手を求めずコンパクトに…」半年かけ磨いた強力打線が優勝の原動力!
昨秋の桐光学園戦でタイブレークの末に敗れ、その悔しさを糧に成長をとげた選手達。特に野手は低反発バットの影響を感じさせない鋭い打球を飛ばし、強力打線を形成した。豊田監督は、「この冬はフィジカルと技術のバランスを徹底してきた。守備だけになりすぎず、打撃にも目を向けながら取り組んできたことがよかった」と語る。低反発バットについても、「派手さを求めるのではなく、コンパクトかつ最短で力を伝える練習してきた。こうした技術は1週間や1か月で習得できるものではないので、半年かけて選手に伝えてきた」と、冬場の取り組みを振り返る。 実際に4番の平野 敏久内野手(3年)は、2試合計で5安打3打点の活躍。「大会期間中もずっと下半身を鍛えてきた。ウエートトレーニングをしたことでスイングが安定して鋭い打球を飛ばせるようになった」と、外野の間を抜ける二塁打を量産して、優勝に貢献した。チームとしても準決勝で10安打中8本の長打を放つなど、冬場に徹底した打力向上策が実を結んだ。 また、大会を通して光ったのは、豊田監督が仕切りに話していた「9イニング勝負」の意識だ。 「次の1点を取りたいと思っている中で、その1点を取らなくても勝てるチームを作らないといけない」 指揮官の言葉を体現するかのように、今大会6試合中4試合で1点差と競ったゲームをものにしてきた。選手たちも「楽しむことが大事」と口を揃え、一つのプレーに一喜一憂せず、目の前の勝利に向かってプレーしてきた。「9イニング勝負」の意識があったからこそ、メンタルの部分でも負けず、勝利につながっていた。 18日から関東大会が始まるが、豊田監督は既に夏の大会を見据えている。「時間の無い中で、夏に向けてもう一度気を引き締め直してチームを作り上げてきたいと思います」。激戦区神奈川を制した武相の今後から目が離せない。