【漫画】「何も覚えていません…」凄惨な交通事故を起こした“高級国民”への裁き、待ち受けるまさかのラストに「いきなり怖すぎ」の声続出
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、別冊ヤングチャンピオンにて連載中で、草下シンヤさんが原作を、内田康平さんが漫画を手掛ける「私刑執行人~殺人弁護士とテミスの天秤~」。 【漫画】「私は一般国民ではないのです」事故を起こしても悪びれない高級国民への裁きに「逃がさない」「どこにでも監視の目がある」と大反響 原作者の草下シンヤさんが6月19日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、3万5千件を超える「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者の草下シンヤさん・内田康平さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。 ■高級国民によって奪われた幼い命 車が歩行者に突っ込み、9ヶ月の乳児の命を奪った。即死だった。この事故で亡くなった輝は、3年の不妊治療を経てようやく授かった命。「初めての家族旅行に行こう」そんな明るい未来をいっぱい思い描いていた中での出来事だった。 事故を起こしたのは朝倉杏子。朝倉家は幕末から続く日本有数の名家で、杏子も日本を代表する画家としてその名を知られていた。自身が主催する展示会に向かう途中での事故だった。 “特別なルート”で警視庁の取り調べを拒否し、1泊30万円の特別室で療養する杏子。そんな杏子から呼び出されたのは、無罪仕事人と呼ばれる弁護士・霧島司だった。「車が突然加速した」「何も覚えていません」と言い張る杏子。挙げ句の果てには、「私は一般国民ではないのです」と言い張る有様だった。 結局最後まで一言も被害者のことを口にせず、自分のことしか考えていない様子の杏子に、霧島たちも、こんな人を守るのが弁護士なんだろうかと疑問を募らせていく。そして迎えた判決の日。裁判でも全く反省の色を見せなかった高級国民・杏子に下された審判とは…。 杏子の悪びれない態度や判決後のまさかの展開に「胸糞悪すぎてムカつくを通り越した」「どんな立場の人間でも逃げられないし、逃がさない」と大きな反響を呼んでいる。 ■原作者・草下シンヤさん「復讐によって幸せはもたらされるのか?を問いかけている」 ーー『私刑執行人~殺人弁護士とテミスの天秤~』を創作したきっかけや理由があればお教えください。 草下:私は日頃から犯罪や裏社会に関する取材をしています。警察の捜査や裁判などを取材していると、法律の穴を突いた加害者が無罪になっていたり、優秀な弁護士を雇うことができた加害者が想定よりも軽い判決で済んでいることが実に多いことに気付かされます。法律というものは公平のように見えて、実は不公平に運用されているものなのです。もちろん、警察は違法捜査を行うことはできませんし、裁判では証拠のない加害者を有罪にすることはできません。犯罪をしていることは明白なのに裁くことができない加害者を裁くことができるダークヒーローを描きたいと思い、霧島弁護士のキャラクターを作りました。 内田:前作の連載が終わり自分の中にあるものを全て出し切った後だったので、何を描いていいか迷っていたときに、ヤングチャンピオンさんに声をかけて頂いたのがきっかけです。 ーー今作を描くうえで「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。 草下:法律の穴を突いて逃れている加害者が悪人であることは当然ですが、一方で、「犯罪者は死刑にしろ!」「一生閉じ込めておけ!」と過激な意見を口にする人もいます。復讐モノの作品は加害者を断罪することでスッキリすることを目的としたものも多いですが、『私刑執行人』では、遺族の心情を丁寧に描くことで、「復讐によって幸せはもたらされるのか?」という点を問いかけるようにしています。また、法律の矛盾点を浮き彫りにすることで他の復讐モノとは一線を画したものになるように注力しています。 内田:主人公霧島をはじめ犯人や被害者、その周りにいる様々な登場人物の心です。キャラの表情だけでなく、演出や背景の描き込み、光や空気感の表現全てに神経を尖らせ、喜怒哀楽の間にある微妙な感情を表現できたらと意識して努力しています。(伝われと念を込めて、笑) ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。 草下:1巻のラストで高校生の霧島が妹とやり取りをするシーンです。霧島は本来とても優しく素直な性格の人物です。それが悲惨な事件を機に変貌してしまいました。私刑執行人としての活動の中で徐々に人間性を失っていく霧島ですが、昔のような笑顔を取り戻すことがあってほしいと思っています。 内田:2話目の『無期懲役が確定したら、あなたを死刑にできないでしょう」というセリフです。青年誌が初めてだったのもあり試行錯誤しながらネームを切っていたのですが、このシーンでは自然と弁護士でもあり私刑執行人としての霧島司というキャラクターが動いて、自分のなかに落とし込めた瞬間だった気がします。 ーー普段作品を描く際に大切にしていることがあればお教えください。 草下:まずは丹念な取材を行うことです。その上でマンガとしての面白さやケレン味を損なわないように、どうやってうまいウソをつくかということを考えています。取材に基づいてすべてを真面目に書いてしまうと硬くなりすぎてしまうので、創作物としての面白さは忘れないようにしています。 内田:読みやすさと分かりやすさです。漫画を読む方が全員が全員しっかり熟読されるとは限らないので、電車の中でなんとなくパラパラと呼んでいても、内容がわかるようにネーム構成やコマ割りを意識したり。作画の際も情報量を多くしてもごちゃごちゃしないように見やすさを意識しています。 ーーご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。 草下:これからも裏社会を舞台にした作品を書いていく予定です。ただ、私の関わる作品はほぼ確実に人が死ぬので、誰も死なない作品を書いてみたいと思っています。売れる気はまったくしませんが…。 内田:ずっと打ち切り漫画ばかりだった才能もない自分が、こうして今も漫画を描いていられるのは、本当に色々な方に助けて頂いたり人のご縁で生かされてると思っているので、日々精進し恩返しをしながら一生漫画を描いて生きていきたいと思います。 ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。 草下:霧島はさまざまな犯罪者を裁きつつ、自分の家族が被害者となった事件の犯人に近付いていきます。復讐のために人生を捧げている霧島がどのような活動をし、犯人に行き着くのか、その結末はどうなるのか、見届けていただけたら幸いです。 内田:私刑執行人を読んで頂きありがとうございます!読んでくださった方の大切な一冊になれるようこれからも頑張っていきますのでどうぞよろしくお願い致します!!